中東かわら版

№11 クウェイト:女性労働者の処遇を巡ってフィリピンとの関係が悪化

 2018年4月25日、『ハヤート』(サウジ資本の汎アラブ紙)紙はクウェイトの外務省が同国に駐在するフィリピン大使に「ペルソナ・ノングラータ」を宣告し、退去を要求したと報じた。また、クウェイトはフィリピンに駐在する自国の大使を召還している。クウェイトの外務省によると、このような事態に至った理由は、在クウェイト・フィリピン大使館の要員が「緊急介入班」と称して人権侵害を訴えるクウェイト人の家屋からフィリピン人女性労働者を外交ナンバーの車両で連れ出したこととされる。

 フィリピンの外務省は、24日の時点でクウェイト側に謝罪していたが、大使の追放・召還については不快感を表明し、クウェイト側に説明を要求した。さらに29日にはドゥテルテ大統領がクウェイトへの女性労働者派遣を禁止すると発表するとともに、現在クウェイトで働いている数千人の女性労働者にも即時帰国を呼びかけた。

 

評価

 外交団・外交官には、公館や住居の不可侵、身体の不可侵などの特権が認められており、これについてはクウェイトに駐在する各国の外交官についても同様であろう。しかし、外交官といえども赴任先で捜査権や逮捕権を持つわけではないし、今般の問題の発端となったような形で自国民保護業務を行う権限がないことも明らかである。

 確かに、クウェイトに限らずアラビア半島の産油国でフィリピンをはじめとする東南アジアなどからの労働者、特に家政婦などとして働く女性が虐待されている問題があることは広く知られており、送出し側の諸国の公館にとって労働者の保護は重要な職務であろう。しかし、現場での逸脱・越権行為によって労働者の送出し国と受け入れ国との外交関係が悪化すれば、送出しそのものに支障をきたす恐れもあることから、今般の事例ではフィリピン側の対応が難しいものとなるだろう。その一方で、アラビア半島の産油国にとっても、各国が脱石油と経済の多角化を進め、外国からの投資や人的資源の誘致を目指す開発計画を策定している中、家庭内労働・肉体労働に従事する人々に対する差別や虐待が一向に改まらないことは、滞在・就労先としての国際的な印象・評価を悪化させることにもつながるため好ましい状態ではないだろう。

(髙岡主席研究員)

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