中東かわら版

№10 UAE:日本の安倍首相の来訪

 日本の安倍首相一行はUAEを訪問(4月29日、30日)し、30日にアブダビのムハンマド皇太子と会談するとともに、日・UAEビジネスフォーラムに出席するなどした。ムハンマド皇太子との会談では、アブダビでの日本企業の海上油田権益の更新(2018年2月)、エネルギー・経済に加え、政治・防衛・教育・農業・先端技術などの諸分野での両国の戦略的パートナーシップの強化が議題となった。双方は共同声明を発表し、戦略的パートナーシップについての共通の見通しと協力戦略策定のために共に行動すると表明した。また、両国は投資保護促進協定に調印した。

 安倍首相には日本企業27社などからの経済人が同行しており、ビジネスフォーラムでは社会資本の開発、エネルギー、宇宙開発、産業育成、人材開発についての意見交換や、青果などの日本産食品の試食・商談会が行われた。

 

評価

 ムハンマド皇太子は安倍首相との会談で、UAEの経済の多様化や文化・人的資源の開発の面で日本への期待を表明した。安倍首相も、政治・防衛、教育、農業、先端技術分野での関係強化を希望する旨表明しており、両国の関係は、石油や天然ガス貿易を主とするかつてのイメージから離れて動き始めている。すでにUAE国内には日本企業が約300社活動しており、両国は経済分野にとどまらない、二国間の多様な活動を推進すべき段階にある。

 一方、2017年の両国の貿易額は280億ドル(前年比10.5%増)に達したが、UAEからの対日輸出(約200億ドル)の95%は石油・石油製品であり、日本からのUAEへの輸出(約72億ドル。うち6割は車両。)は前年比でおよそ10%の減少だった。このように、実際の両国の貿易関係は、伝統的な相互の印象(UAE=石油、日本=工業製品)に沿ったものにとどまっていると言え、両国が戦略的パートナーシップの強化を推進するためにはこのような実態を変えていくことが重要となろう。また、共同声明には防衛分野での協力推進も謳われたが、装備の輸出は日本にとっては軍事・防衛分野での情報収集・発信力の向上にも資するものと思われるため、この分野で両国の協力がどのように展開するかも注目点となろう。

(主席研究員 髙岡 豊)

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