中東かわら版

№6 シリア:アメリカ、フランス、イギリスが攻撃を実施

 2018年4月14日朝、アメリカ、フランス、イギリスの3カ国は、シリア政府軍が4月7日にダマスカス東郊のドゥーマにて化学兵器を使用したと主張してシリアに対する軍事攻撃を行った。攻撃対象は、ダマスカス市郊外、及びホムス県にあるシリア軍の研究開発施設や軍事施設だった模様である。攻撃を実施した諸国は、攻撃の目的はシリア政府による化学兵器の生産・使用能力を弱体化させるためで、現時点では次の攻撃を行う予定はないと発表した。

 一方、シリアの報道機関はダマスカス郊外の「調査研究センター」やホムス県の軍事物資集積所が攻撃され、防空軍がミサイル13発を撃墜したと報じた。報道によると、撃墜されたミサイル片のため民間人3人が負傷した。シリアの外務省は、3カ国による攻撃は国際法や国連憲章に明白に違反しており、3カ国が国際法を無視していることを改めて示したと非難した。

 

評価

 シリア政府に対し化学兵器の使用を口実にアメリカが攻撃を行うのは、2017年4月以来2度目となるが、今回はフランス、イギリスも攻撃に参加し、攻撃対象の件数も複数になった。これにより攻撃が強化されたようにも見えるが、3カ国の目標は「政府軍による化学兵器の使用防止」に矮小化されている上、攻撃予告から1週間近く経過したのちの攻撃でもあり、シリア政府軍に大打撃を与えたとは考えにくい。また、今般の問題をめぐって3カ国と鋭く対立したロシアやイランの拠点・施設は攻撃対象とはなっていない。ここから、今般の攻撃も2017年の例と同様、シリア紛争の戦況を変えるものとはならないと思われる。シリア紛争の趨勢は、ロシア、イランからの支援を受ける政府軍の勝勢で推移しているが、これが変わらない以上、今般の攻撃を実行した3カ国が日ごろ主張している「独裁政権による自国民虐待」を防ぐことはできない。

 アメリカなどによるシリア政府への攻撃がこの程度の量・質に止まる理由は、攻撃を実施した各国に自力でシリア政府を打倒し、事後処理をする意思と能力がないからだ。こうした状況でシリア政府に「必要以上の」打撃を与えれば、それは「イスラーム国」や「反体制派」の主力であるイスラーム過激派諸派にとって格好の援護射撃となり、やはりシリア人民の苦境が深刻化することにつながる。

 また、今般の攻撃は化学兵器禁止機構の調査団が活動を始める前に行われたため、攻撃が「同機構に調査を行わせない」との意味をも帯びることになった。これは、化学兵器の使用だけでなく紛争全般について、客観的事実とは別の次元で紛争の諸当事者が心に描くストーリーが現実よりも優先されている状況を如実に示している。このような振る舞いが、実際に紛争の現場にいるシリア人民をないがしろにする行為であることは言うまでもない。

(髙岡主席研究員)

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