中東かわら版

№2 エジプト:大統領選挙でシーシー大統領再選(公式結果)

 3月26~28日にかけて大統領選挙が行われ(在外投票は3月16~18日)、シーシー大統領が再選された。4月2日に国家選挙機構が発表した公式結果によれば、シーシー大統領の得票率は97.08%、対立候補のムーサー・ムスタファー・ムーサー(ガッド党党首)は2.92%で、事前の予想通りシーシーの圧勝となった。得票率は、前回2014年大統領選挙(47.13%)より数ポイント下回る41.05%であった。

 以下、表1・2は国家選挙機構が4月2日に発表した公式結果である。

 

 (出所)国家選挙機構

 

評価

 2014年に引き続き、シーシー大統領は圧倒的な得票率で勝利した。これは、2013年クーデタから続く反対勢力の弾圧や言論統制によって、ムスリム同胞団だけでなく非宗教的な反対勢力も活動が困難になったこと、また今次大統領選挙に向けて有力な対立候補が立候補不可能な状況に追い込まれたことが原因にある(『中東かわら版』No.163、2018年2月1日)。

 唯一の対立候補となったガッド党の党首、ムーサー・ムスタファー・ムーサーは、もともとシーシー大統領の再選支持を表明していたが、大統領選立候補申請の最終日に突然立候補を決定した。このほぼ無名の政治家がシーシー大統領と接戦を展開できるはずもなく、さらに国内外のメディアでは、競争的な選挙に仕立て上げるために政府から立候補を打診された「見せかけの」候補者ではないかと語られた。

 このように、政治的自由のない環境と無名の政治家が対立候補となったことで、選挙がシーシー大統領の再選で終わることは予想されており、国民の間で大統領選挙への関心は低かった。さらに2016年の変動為替制への移行によって物価が急騰したことで国民の政府に対する不満も高まっており、政府にとって高い投票率を確保することこそが政権の正統性を内外に証明する手段となった。そのため政府は国民に向けて繰り返し投票を呼びかけていた。

 政府の監視下にある国営・民間メディアは、有権者が誇らしげに投票する様子や若者が投票する様子を報じたが、ロイターや現地独立メディアは、投票所に人はまばらで、年配者による投票が多かったと報じている。また政府支持派の実業家や有力者が有権者に食料や現金を分配して投票を促したことや、政府支持派の政党や企業が有権者をバスで投票所に移送したことも報道されている。投票率41%という数字には、こうした動員が少なからず影響を与えたものと考えられる。

 投票率の低さには、選挙への無関心、シーシー政権への反対、支持、いずれも含まれているだろう。その一方で、表2の県別投票率からは、どの県でシーシー政権への支持が低いのかという点を読み取ることができる。ムバーラク時代の選挙から現在まで、デルタ地方で投票率が高く中南部(下エジプト)で低いという傾向が続く一方で、2011年革命を境に、カイロ、アレキサンドリア、ギザ県といった都市圏での投票率が全国最低レベルから最高レベルに急上昇した。しかし、シーシー政権が発足した2014年大統領選挙から都市圏の投票率は再び低下し、2015年の議会選挙では全国最低レベルに落ちた(中東分析レポート「2018年エジプト大統領選挙に向けての展望」No.R17-06 ※会員限定)。今回の大統領選挙でも、都市圏の投票率は最低レベルに位置する。ここからは、都市圏の有権者は2013年以降の政治に少なからず異議をもっている層であると推測できよう。彼らは、「シーシーか否か」という選択肢の少ない選挙に参加しないという方法で、異議申し立てを行っていると考えられる。

(金谷研究員)

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