中東かわら版

№1 パレスチナ・イスラエル:ガザ境界での衝突が激化

 2018年3月30日、ハマースがイスラエルとガザの境界地帯で「土地の日」(1976年にイスラエル国内で行われたアラブ人の土地接収の際の衝突で、イスラエル・アラブ6人が警察に射殺された事件の記念日)にあわせてパレスチナ難民の帰還のための大行進を行い、イスラエル軍の銃撃でパレスチナ人15人が死亡し、1700人以上が負傷する事態となった。

 30日の大行進は、ガザのハマースが事前に予告しており、イスラエル側は、29日までに、境界地帯での警備体制を強化し、約100人の狙撃兵を配置した上に、メディアの取材を排除するために同境界地域を「軍事閉鎖地域」に指定していた。30日の大行進には、パレスチナ側の発表で1万7000人~5万人、イスラエル軍発表で約3万人が参加し、イスラエルとガザの境界にあるフェンス付近でデモ行進を行った。イスラエル軍側は、パレスチナ側からの発砲があったと主張しているが、ハマースはイスラエル軍は、境界フェンス付近にいた丸腰の住民への実弾射撃を実行したと主張している。1日の死者が15人になったは、2014年夏のイスラエル軍とハマースの大規模戦闘の時以来であるが、非武装住民のデモに対する銃撃で1日に15人が死亡したすれば、こうした事態は1987年末に開始された第一次インティファーダ以来である。イスラエル軍は、イスラエル側に生命の危機があれば発砲すると事前に警告しており、銃撃後には、兵士らは正しく行動したと主張している。ネタニヤフ首相は、兵士らの行動を称賛した。イスラエル軍は、大行進の参加者は、ハマースのメンバーとその家族、及び他の軍事組織のメンバーであり、死者15人の中にハマースなどの活動家10人が含まれると主張している。

 30日、西岸では、抗議のゼネストが実施された。同日夜、国連安保理は、緊急会合を開催し、イスラエルに対する非難声明を出そうとしたが、米国の反対で否決された。国連のグテーレス事務総長やEUは、今回の事件に関する調査委員会の設置を主張している。米国国務省報道官は、自身のツイッターで今回の事件を「深く悲しんでいる」と表明した。4月1日、フランス外務省は、イスラエルは市民を保護する義務を果たしていないと批判し、最大限の自制を求めた。

評価

 30日の衝突では15人が死亡し、1700人以上が負傷したが、ガザのハマースもイスラエル軍も、対決姿勢を維持している。イスラエルとパレスチナの間に政治交渉がまったくない状況が長期間継続したことで、再び、ガザのパレスチナ人が犠牲になる状況が生まれている。ハマースは、ガザ市民がイスラエル軍に撃たれることを承知で、境界地帯での抗議デモを実行した(イスラエル軍の主張)、イスラエル軍は、丸腰のパレスチナ人が境界のフェンスに接近しただけで、彼らに向けて実弾射撃を行った(ハマースの主張)と双方の主張には隔たりがある。大規模行進は、5月中旬まで毎週金曜日に実施される予定である。境界地帯での大行進強行の結末がどうなるにせよ、パレスチナ市民が犠牲になる状況では、ハマースあるいはイスラエル軍が勝者になることはないだろう。

 

(中島主席研究員)

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