中東かわら版

№170 イスラエル・パレスチナ:ガザでの戦闘が激化

 2月17日からガザをめぐる軍事情勢が緊迫している。17日、イスラエルとガザの境界にあるフェンス付近で爆発がありイスラエル軍兵士4人(重傷2、軽傷2)が負傷した。また同日、ガザからイスラエル南部へのロケット弾攻撃があり、イスラエル人の住宅に落下した。同ロケット弾は不発弾だったため住宅の屋根が破損したが、人的な被害はなかった。パレスチナ側は、17日のイスラエル軍戦車の報復砲撃で、パレスチナ人2人が死亡したと発表しているが、イスラエル側のメディアはパレスチナ人死者について報道していない。18日、イスラエル軍は、ハマースの施設など18カ所を空爆した。一方ガザからイスラエル南部にロケット弾1発が発射されたが、空地に落下している。イスラエル軍は、同日夜、境界付近にある農地の地下にあるトンネルを空爆した。イスラエル軍の空爆の標的数は急増したが、爆撃によるパレスチナ側の死者は出ていない。イスラエルもガザのハマースも、戦闘の拡大は望んでいないと報道されている。

 

評価

 今回、イスラエル軍のガザへの報復攻撃が激化したのは、ガザ境界付近の爆発でイスラエル軍兵士4人が負傷したためだろう。ガザとイスラエルの境界付近での衝突では、パレスチナ人が死傷することは多いが、イスラエル軍兵士が負傷するケースはまれである。またガザからイスラエル南部へ撃ち込まれるロケット弾は、通常、空地に落下することが多いが、今回はイスラエル人の住宅に落下(不発)していることもあるかもしれない。イスラエル軍の空爆した標的数は多いが、パレスチナ側の死傷者は少なく、イスラエル軍が慎重に爆撃をしている可能性もある。現在イスラエル軍は、ガザ住民の経済的困窮がさらに深まり、住民暴動あるいは社会秩序の崩壊が起きることを真剣に懸念している。そうした状況の中で、ガザへの攻撃を強化するのはイスラエル軍としては避けたいだろう。またレバノン・シリアと面する北部での軍事的緊張が高まっており、その最中に南部でも軍事的緊張が高まるのは、イスラエル軍にとっては得策ではないとの判断もあるだろう。

 他方、イスラエル軍は、昨年からイスラエルとガザの境界付近にあるハマースあるいはイスラーム聖戦機構の地下トンネルへの空爆を強化している。ガザとの境界地帯で掘られたトンネルへの空爆は今年2回目になる。イスラエル軍は、戦闘が拡大した際、ハマースあるいはイスラーム聖戦機構の戦闘員がトンネルを利用してイスラエル側に侵入することに神経質になっている。

(中島主席研究員 中島 勇)

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