中東かわら版

№158 エジプト:シーシー大統領が大統領選への立候補を表明

 1月19日、シーシー大統領は、大統領任期4年間の実績を報告する大会の最終日に、大統領選挙への立候補を表明した。「国民の物語」と題して3日間行われた大会では、任期中の大規模インフラ事業(スエズ運河拡張、道路・橋梁工事など)、住宅建設、経済改革、テロ対策などの実績が報告された。これまでの実績を称える場で立候補が発表された形となった。

 大統領候補として選管に申請するためには、(1)国会議員20名以上の推薦署名、または(2)15県以上かつ1県あたり1,000人以上、計25,000人以上の有権者からの推薦署名を集めることが条件となっている。シーシー大統領に関しては、すでに全国会議員596人のうち536人が署名を済ませ、各県でも有権者の推薦署名が数万単位で集まっている。

 シーシー大統領の他には、ハーリド・アリー弁護士、サーミー・アナーン元参謀総長、ムルタダー・マンスール議員が大統領選挙に名乗りを上げている。立候補申請の受付は1月29日まで。

 

評価

 過去にシーシー自身が立候補について「人民が自分の再選を望むのなら」と含みをもたせる表現で言及していたことや、立候補申請期間の開始直前に政権の実績報告大会を開催したことから、シーシーの立候補はある程度予想されていた。経済改革による物価上昇やテロ対策の失敗はシーシー政権への不満を大きくしつつあるが、いまだシーシー大統領は社会に広く支持されている。それは、政治的自由や言論が厳しく統制された現状において、シーシーの言動や政策が国家機関、閣僚、議会、メディアのすべてで称賛され、大統領の「強いリーダーシップ」が強調されるような政治環境が出来上がっているためであろう。

 シーシー大統領の立候補表明と同じ19日に、アナーン元参謀総長が立候補を表明した。軍の最高幹部の出身であることやクリーンなイメージがあることから、大統領選挙ではシーシーに対する最大のライバルになりうるが、シーシーの勝利はほぼ確実とみられる。シーシーに不満をもつ有権者の一部は、反シーシーの意味を込めてアナーンに投票するかもしれないが、多くの反シーシー有権者は事前に結果が分かっている選挙に参加する意義を見出せずに、選挙そのものに参加しないと思われる。

(研究員 金谷 美紗)

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