中東かわら版

№154 パレスチナ:PLO中央委員会の開催

 

 1月14日、PLO(パレスチナ解放機構)の中央委員会が、西岸のラーマッラーで開催された。同委員会の第28回会合には、中央委員会メンバー109名中87人が参加した。初日の会合で、アッバース大統領は約2時間に及ぶ演説を行い、米国のトランプ政権を激しく非難した。アッバース大統領は、トランプ大統領の中東和平政策について「世紀の取引ではなく、世紀の侮辱だった」と述べている。アッバース大統領は、同演説で、中央委員会に対してイスラエルとのすべての合意の見直しを求めた。中央委員会は、翌15日、米国を仲介者とは見なさないこと、パレスチナのイスラエル承認(1993年9月)については、パレスチナ側の条件(東エルサレムを首都とするパレスチナ国家の承認)を満たすまで凍結すること、イスラエルとの治安協力の停止などを決議した。PLO中央委員会は、PLO執行委員会に対して今回の決定を実施するよう求めた。

 アッバース大統領が公の演説で、米国を今回ほど激しく非難したのは初めてである。また1993年の「オスロ合意」以降、イスラエルに対する不満が高まった際、パレスチナ側の要人が、イスラエル承認の取り消しに言及したことはあるが、PLOの決議機関が、条件つきであっても、イスラエル承認の凍結を機関決定したのも今回が初めてである。

 イスラエル側の報道では、アッバース大統領が今回激しいトランプ政権非難をした背景には、トランプ政権が考えている中東和平に関する提案内容をサウジから聞いたためだとの説があるが、米国もパレスチナ側も否定している。

評価

 アッバース大統領は、14日の演説で非常に激しいトランプ政権批判を行ったが、15日のPLO中央委員会の決定は、大統領演説の激しさと比較すると冷静な内容になっている。ただ条件つきであってもパレスチナ側が、イスラエル承認の凍結を公の機関の決定として打ち出した意味は重い。イスラエル承認の取り消しは、1993年9月以降のパレスチナとイスラエルの間の合意や関係をすべて破棄することを意味するからである。中央委員会の決議を実施するかどうかの最終決定は、PLO議長であるアッバース大統領の判断による。中央委員会は、前回会合でイスラエルとの治安協力停止を決議しているが、アッバース大統領は、同措置を取っていない。14日の演説でアッバース大統領は激しい言葉を使ったが、イスラエルとの治安協力停止、あるいはパレスチナ自治政府解体などの過激な考えや政策は表明していない。今回PLOの中央委員会は、トランプ政権に対する対決姿勢を鮮明にしたことは確かであるが、パレスチナ側の新たな戦略はまだ見えていない。

 

(中島主席研究員)

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