中東かわら版

№153 パレスチナ:米国が国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)支援を一部保留

 1月16日、米国務省は、パレスチナ難民を支援する国連機関「国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)」に対する2018年の最初の拠出金1億2500万ドルについて、6000万ドルの支払いは行うが、6500万ドルについては保留すると発表した。国務省報道官は、UNRWAの組織改革を見た上で、6500万ドルの拠出については判断するとした。同報道官は、今回の措置は、政治的なものではないと説明した。記者団から、トランプ大統領がパレスチナに対する不満を表明したツイッターとの関係を尋ねられた報道官は、自分は知らないがホワイトハウスが答えるかもしれないと返答している。

 パレスチナへの不満は、1月2日にトランプ大統領とヘイリー国連大使がツイッターなどで表明していた。報道によれば、米国の国連代表部はUNRWA援助の大幅削減を主張したが、国務省と国防省が反対した。両省は急激な支援削減はパレスチナ難民を苦しめること、またパレスチナ難民を多数かかえるヨルダンを苦境に追い込み、地域情勢を不安定化させるとして反対した。イスラエル軍とイスラエルの治安機関は、援助削減は、西岸とガザの治安を悪化させるとの懸念を持っていると報道されている。そのためネタニヤフ首相は、UNRWAに対する支援を急激ではなく、順次削減し、最終的にはUNRWAを解体して、パレスチナ難民支援はUNHCRにまかせればいいと発言している。PLOは今回の決定について、最も弱い者を苦しめる政策だと非難した。米国はUNRWAの最大の支援国で、2016年には約3億6800万ドルを拠出している。米国の援助がUNRWAの予算の中で占める割合は約3割になる。

評価

 国務省報道官は、拠出金の一部保留は、UNRWAの組織改革を進めるためだと主張したが、トランプ大統領のパレスチナに対する不満を受けた措置でもあるだろう。トランプ大統領は、パレスチナは、米国からの援助を受けながら米国に感謝しておらず、中東和平交渉に応じていないと不満を表明していた。アッバース大統領は、14日に行ったPLO中央委員会の演説で、トランプ政権は、パレスチナが中東和平交渉に出てこないと批判するが、交渉はどこにあるのだと援助削減の動きを非難していた。拠出金の支払い保留の結果、どのような影響が出るかは、まだはっきりしないが、食料支援や医療支援に影響が出るようであれば地域の新たな不安材料になるだろう。ガザの難民は、経済的に困窮している。シリアのパレスチナ難民は、シリア紛争の影響を直接受けている。レバノンとヨルダンでは、シリア難民の流入による財政難のためパレスチナ難民支援が縮小されている。パレスチナ側は、報道などですでに援助削減の動きを知っており、決定自体に驚かないとしても、パレスチナ人のトランプ政権に対する反発や怒りがさらに強まることは避けられない。

 

(中島主席研究員)

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