中東かわら版

№150 チュニジア:全国で物価上昇に反対する抗議・暴動

 1月8日夜から10日にかけて、チュニジア各地で物価上昇に反対する抗議行動や暴動が発生した。内陸の中西部に位置するカスリーン県、シーディー・ブージード県、ケビリー県などで、2018年予算で決定された一部食料品の値上げや付加価値税の1%増税、物価上昇に反対する抗議が始まり、その他の都市に拡大した。10日までに抗議が確認された県を以下の図に示した。一部の都市では、警察と衝突して負傷者が出たり、抗議に参加していた若者が警察署・税務署の放火、電気ガス公社施設の攻撃、略奪などの犯罪を犯したりしている。内務省は、10日までに237人を逮捕したと発表した。

 政府や与野党、チュニジア労働組合総連盟(UGTT)など市民団体は、警察に対する暴力や略奪を非難した。しかし同時に、野党や連立与党の一部は、2018年予算で決定された一部物資の値上げや増税はすでに物価上昇に苦しむ国民をさらに窮地に追い込む政策であるとして、チュニジアの呼びかけ党とナフダ党を中心とする連立内閣を批判し、2018年予算の見直しを要求している。

図:抗議が発生した県

 

評価

 チュニジアの物価は2011年以降上昇し続けており、2018年予算で物価引き上げと増税が決定されたことを引き金に、市民の不満が抗議行動で噴出したと考えられる。過去4年間のインフレ率は、2014年4.8%、2015年4.1%、2016年4.2%、2017年6.4%であった。政府が物価引き上げや増税を決定した背景には、世界銀行からの融資と引き換えに経済改革を推進しなければならない事情がある。財政均衡のための改革は不可避であり、これによって市民生活に負担が課せられ、政府に対する不満が募ることもやむをえないかもしれない。特に若者層のなかには、雇用機会が限られ、賃金が低いにもかかわらず、物価が引き上げられることに強い不満があるだろう。

 しかし、抗議の拡大と同じく重要なことは、チュニジアの民主化移行の成功要因として指摘されてきた合意型政治に限界が現れはじめたように思われることである。与野党や市民団体は2016年7月、「カルタゴ合意」で社会経済問題への挙国一致的取り組みを確認し、同8月にチュニジアの呼びかけ党、ナフダ党、他4党から成る大連立内閣が成立した。しかし最近は、チュニジアの呼びかけ党とナフダ党中心の政策決定や腐敗対策の不十分さに対して、他の連立与党や野党から批判が出ている。すでに2党が「カルタゴ合意」からの脱退を表明した。合意型政治は政策推進力を生むのではなく政党間対立や批判の応酬を長引かせており、これが市民の政治不信に拍車を掛けている。合意型政治が合意形成そのものを目的とするのではなく、腐敗対策、雇用政策、産業活性化政策の推進力となることが求められている。

(金谷研究員)

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