中東かわら版

№147 イラン:革命防衛隊が抗議活動の鎮圧を宣言

 2017年12月末から続く全国各地での抗議活動について、1月7日、革命防衛隊は鎮圧を宣言する声明を発出した。声明では、イランの人々が、数万人のバスィージとともに暴動の鎮静化の場面で大きな役割を発揮し、「米国、英国、シオニスト政権(イスラエル)、サウード家、モナーフェギーン(偽善者の意;モジャーへディーネ・ハルグを指す)、君主制主義者」による(抗議活動の)連鎖を破壊した、と述べている。

 各種報道によると、マシュハドで始まった抗議活動は全国80カ所前後にまで広がった。イラン国営テレビは、1月1日までに12人の死者が、2日に9人の死者が発生したと報じており、抗議活動開始から今日までに少なくとも20人以上が死亡したと見られる。BBCがとりまとめたイラン政府の公式発表によると、1月8日までに全国で少なくとも2024人(テヘラン州:486人、マルキャズィー州:396人、ホルモズガーン州177人)が拘束された。

 

評価

 抗議活動は、1月2日をピークにして鎮静化に向かっている。2009年の「緑の運動」の抗議活動では公式発表で36人の死者、4000人の拘束者が発生したことと比較すると、今回の抗議活動は短い期間だが2009年に匹敵する衝突や取り締まりがあったと推測される。

 他方で、抗議活動への参加者数が伸び悩み、運動が早くも下火になっているのは、抗議活動を支持する政治勢力を欠いたこと、運動を指揮する指導者が不在であったことが最大の要因であろう。2009年の抗議活動は大統領選挙における不正疑惑への反発という大きな争点が存在し、それゆえに大統領選挙に敗れた改革派が抗議活動の後押しをした。今回の抗議活動は、保守強硬派の支持層である低所得者層がロウハーニーの経済政策批判を行ったことが発端となったとされているが、次第に体制批判に移行していった。イラン政界における改革派はあくまでイランの体制内での改革を目指す政治勢力であるため、民衆が体制や最高指導者への激しい批判を開始した段階でこれに同調する機会は失われたと言うことができるだろう。

 抗議活動が再燃する可能性は否定できないものの、今後は国内政治勢力間の闘争に舞台は移っていくだろう。1月8日、ロウハーニー大統領は、「イランの人々が経済的な要求だけを抱いていると言うことは侮辱である」、「若者世代の生活や世界に対する考え方は、(2世代前の)我々とは異なる」と述べた。抗議者の要求に応えるとの名目で、保守強硬派が反対する各種規制の撤廃といった政治・社会改革を進めていく意向を示したものであろう。他方で、保守強硬派は、核合意後も国民の生活を改善できていないことが抗議活動の原因になったと主張するとともに、米国やサウジといった抗議活動を煽った外敵に対する強硬な対応を求めていくだろう。抗議活動の発生とそれに伴う欧米諸国との対立は、イランへの投資を更に鈍らせる要因になりうるため、ロウハーニーの経済政策は一層の困難に直面することが予想される。

 

※12月末時点での動静・分析については、「イラン:反政府抗議活動の発生」『中東かわら版』No.146(2017年12月30日)を参照

(村上研究員)

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