中東かわら版

№145 イスラエル・パレスチナ:国連総会緊急会合が米国非難決議を採択

 12月21日、国連総会の緊急特別会合は、トルコとイエメンが提出したエルサレムをイスラエルの首都と認定した米国の決定撤回を求める決議案を賛成多数で採択した。投票結果は、賛成128、反対9(米国、イスラエル、グアテマラ、ホンジュラス、トーゴ、ミクロネシア、マーシャル諸島、パラオ、ナウル)、棄権35(ハンガリーなど中東欧諸国やハイチ、ジャマイカなどのカリブ海諸国)、欠席21カ国となった。同決議は、「エルサレムの特性や地位、人口構成を変えるいかなる決定や行動も法的に無効であり、安全保障理事会の関連決議に基づき取り消されなければならない」とした。同決議案については、20日、トランプ大統領が決議で賛成を表明する国に対して経済支援を削減する構えを見せて警告していた。パレスチナ側は、同決議採択を称賛した。イスラエルのネタニヤフ首相は、「ばかげた決議」だと非難した。22日、米国のトランプ大統領は、自分のツイッターで米国は経済支援として「7兆ドルを浪費」したと書いた。米国の主要援助国である中東の国(エジプト、ヨルダン、アフガニスタン、イラク)は、今回賛成に投票している。24日、グアテマラのモラレス大統領は、テルアビブに大使館をエルサレムに移転させる考えを表明した。

 パレスチナでは、22日(金曜日)に3週連続で「怒りの日」のデモが、西岸とガザで実施された。同日の衝突での死者は2人。パレスチナ側の発表では、12月6日からの24日までの衝突での死者数は累計12人、負傷者666人、逮捕者数は535人となっている。12月24日にイスラエル国会外交・軍事委員会で証言したイスラエルの治安機関シンベドのアルガマン長官は、西岸・ガザでの衝突は半年続く可能性もあると証言している。ガザからのロケット弾攻撃は、17日以降停止されている。

評価

 国連総会緊急特別会合の投票では、米国の経済支援停止の圧力もあり、棄権・欠席する国が増加したが、国際社会の大多数は、米国の政策に反対を表明した。米国とイスラエルと共同行動をした国は9カ国にとどまり、米国の圧力を受けて、米国の決定に賛成した国が増えたとは言えない結果となった。イスラエルに関連する総会決議では、常にイスラエルを支持する国は、米国と米国の影響力の強い太平洋の小国(ミクロネシア、マーシャル諸島、パラオ、ナウル)の計5カ国である。今回の投票では、5カ国とイスラエルで構成されるとコア・グループのほかには3カ国が反対したに留まった。

 西岸・ガザでの衝突は、集団礼拝が行われる金曜日を中心に継続されている。約3週間の衝突で、死者が10人を超えるような事態は最近なかっただけに、動向を注視する必要がある。

 

 

(中島主席研究員 中島 勇)

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