中東かわら版

№143 米国・イスラエル・パレスチナ:米国が国連安保理で拒否権を行使

 12月18日、国連安保理は、エルサレムをイスラエルの首都と認定した米国の決定を非難する決議案を採決し、賛成14、反対1(米国)で否決した。エジプトが提出した決議案が、米国の拒否権行使で否決された後、パレスチナ指導部は、国連総会の開催を要請するとともにアッバース大統領が22の国際機関や国際条約への加盟申請書に署名した。アッバース大統領は、19日にサウジを訪問してサルマーン国王と会談すると報道されている。一方、ホワイトハウスは18日、12月20日から予定されていたペンス副大統領のエジプト、イスラエル訪問を1月中旬まで延期すると発表した。延期の理由は、上院議長を兼任するペンス副大統領が、税制改革法案の採択に立ち合うためとされた。ファタハとハマースは、ペンス副大統領がエルサレムを訪問する際、エルサレムで大規模な抗議デモをするよう西岸の住民に呼びかけていた。また同副大統領は、イスラエル国会で演説する予定だった。

 トランプ大統領が、12月6日にエルサレムをイスラエルの首都と宣言した直後は、西岸・ガザでの抗議行動は低調だった。しかし、その後も散発的であるが衝突が継続し、15日の金曜日には、住民とイスラエル治安部隊との衝突が激化し、1日で4人が死亡(西岸2、ガザ2)する事態になっている。ガザからイスラエル側へのロケット弾攻撃も増加しており、12月6日から18日までの間に計18発(イスラエル側報道)が発射されている。今のところイスラエル側に人的な被害はないが、車や住宅に軽微な損傷が出ている。イスラエル軍は、ガザからのロケット弾攻撃は、すべてハマースの責任だと主張して、ハマースの施設に対する報復空爆・砲撃を実施している。報復空爆でのパレスチナ側の死者は、今のところ2人である。

評価

 ペンス副大統領のエルサレム訪問が延期されたことで、エルサレムでのパレスチナ人とイスラエル治安部隊の大規模衝突が起きるリスクは、一時的であれ、回避された。ファタハやハマースは、金曜日を「怒りの日」に指定し、トランプ大統領の決定に対する抗議行動をするよう住民に呼びかけている。15日の衝突では、パレスチナ人4人が死亡した。西岸とガザで、住民とイスラエル治安部隊の衝突の結果、1日の死者が4人になるような事態はここ数年では初めてである。パレスチナ側で、住民の怒りに加えて、抗議行動の呼びかけ、参加者の動員、デモを主導する組織的な体制が整備されつつあるのであれば、22日あるいは29日の金曜日の衝突は一層激しさを増すかもしれない。武器を使わず、投石で抵抗する住民との衝突が拡大する場合、イスラエル軍は対応策に苦慮するだろう。

 報道では、アッバース大統領及びパレスチナ指導部は、トランプ政権を中東和平交渉での仲介者とは見なさないと判断したとされる。そうであれば、パレスチナ側は、新たな戦略や戦術を策定する必要がある。パレスチナ指導部の間では、「オスロ合意は終わった」との認識が強まりつつあるとの分析もある。またパレスチナの世論調査では、アッバース大統領の辞任を求める声が増大している。交渉による解決を模索してきたアッバース大統領に対する不満が増大しているようだ。

 トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と宣言した後、国際的な非難が巻き上がる中で、トランプ政権は、米国は中東和平交渉の仲介者であり続ける意思があると主張している。しかし、その主張は、18日の安保理決議の結果のように国際社会の理解を得られていない。

(中島主席研究員)

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