中東かわら版

№141 クウェイト:第7次ジャービル内閣の成立

 12月11日、サバーフ首長の任命を受けたジャービル首相が新内閣を成立させた。ムハンマド・ハーリド副首相兼国防相や、議会から不正行為を糾弾されていたムハンマド・アブドゥッラー内閣担当国務相らが辞任し(詳細は「クウェイト:ジャービル内閣の総辞職」『中東かわら版』No.113(2017年10月31日)、第一副首相兼国防相にサバーフ首長の長男であるナーシルが任命されるなど、新たに9人が入閣した。新内閣の顔触れは以下のとおり。

首相 ジャービル・ムバーラク・ハマド・サバーフ 王族(ハマド家)、首相(2011-)
第一副首相
国防相
ナースル・サバーフ・アフマド・サバーフ 王族(ジャービル家)、首長府相(2006-2010)
副首相
外相
サバーフ・ハーリド・ハマド・サバーフ 王族(ハマド家)、第一副首相兼外相(2014-2017)
副首相
内相
ハーリド・ジャッラーフ・サバーフ 王族、 副首相兼内相(2016-)
副首相
内閣担当国務相
アナス・ハーリド・ナースル・サーリフ 副首相兼財務相(2014-2017 )
財務相 ナーイフ・ファラーフ・ムバーラク・ハジュラフ 資本市場庁長官(2014-2017)、財務相(2012)
社会・労働相
経済担当国務相
ヒンド・サビーフ・バッラーク・サビーフ 女性;社会労働相(2014-2016)、経済担当国務相(2016-)
商工相
青年担当国務相
ハーリド・ナーシル・アブドゥッラー・ロウダーン 商工相(2016-)
情報相 ムハンマド・ナーシル・アブドゥッラー・ジャブリー ワクフ・イスラーム相兼地方自治担当国務相(2016-2017 )
保健相 バーシル・フムード・ハマド・サバーフ 医者
石油相
電気・水相
バヒート・シビーブ・バヒート・ラシーディー クウェイト国際石油(KPI)CEO
住宅担当国務相
サービス担当国務相
ジナーン・ムフシン・ハサン・ラマダーン 女性
教育相
高等教育相
ハーミド・ムハンマド・カミーフ・アーズミー 高等教育省次官
公共事業相
地方自治担当国務相
フサーム・アブドゥッラー・アブドゥルワッハーブ・ルーミー  
国会担当国務相 アーディル・ムサーイド・ジャーラッラー・フラーフィー 元国会議員(2013-2016)
司法相
ワクフ・イスラーム相
ファハド・ムハンマド・ムフシン・アファーシー 内閣ファトワ・法制局技術部長(2015-2017)

注1:太字は新たな入閣者

注2:各閣僚の詳細な略歴は、会員専用ページの「要人リスト」を参照のこと

 

評価

 サバーフ首長の長男であるナーシル・サバーフ(以下NbS)が第一副首相として再入閣したことは、クウェイトの後継者レースに影響を与えるかもしれない。88歳になるサバーフ首長の後継にはサバーフの異母弟にあたるナッワーフが皇太子に任じられているが、ナッワーフも既に80歳になっており、仮に数年以内に王位継承が起きるとしても、短期政権となる可能性が高い。次期皇太子には、2006年から首相を務めていたサバーフ首長の甥にあたるナーシル・ムハンマド(以下NbM)が有力と見られていたが、王位継承をめぐる対抗馬とされていたアフマド・ファハドとの政争により2011年に首相を退いてから、公職に就いていない(NbMとアフマド・ファハドの政争については以下を参照「クウェイト:体制転換疑惑問題の決着」『中東かわら版』No.280(2015年3月31日)「クウェイト:アフマド・ファハド元副首相に有罪判決」『中東かわら版』No.138(2015年12月14日)

 このような状況下で、サバーフ・ハーリド外相を第一副首相から副首相に格下げし、さらに彼の兄弟であるムハンマド・ハーリド国防相を解任させて、NbSを第一副首相兼国防相のポストに突如として任命したことは、何らかの意図があるものとして憶測を呼ぶことになるだろう。もっとも、NbSは既に69歳になっており、閣僚経験も首長府相として務めた4年間だけである。今後、NbSが有力な後継者候補となりうるかは、閣内でどれだけ手腕を発揮できるかにかかっていよう。

(研究員 村上 拓哉)

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