中東かわら版

№139 イスラエル・パレスチナ:米国のエルサレム首都宣言後の動き

 トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都だと宣言したことに対して、ファタハやハマースなどのパレスチナの政治組織は、6日から住民に抗議行動を呼び掛けていた。パレスチナの赤新月社によると、7日、西岸のラーマッラー、ナブルス、ベツレヘムなどで、パレスチナ人の若者らがイスラエル治安当局と衝突し、153人が催涙ガスやゴム弾などで負傷した。ガザの衝突では、18人が負傷した。負傷は軽傷で死者は出ていない。またガザでは6日、西岸では7日に抗議のためのゼネストが実施され、公共機関、店などが閉鎖されている。7日夜、ガザからイスラエル南部にロケット弾1発が撃ち込まれた。イスラエル側に被害はなかったが、イスラエル軍はガザのハマース施設2カ所を報復攻撃している。

 政治的な動きでは、7日、ファタハ幹部ジブリール・ラジューブが、12月19日に西岸のベツレヘムを訪問予定の米国のペンス副大統領について、ファタハは同副大統領の訪問を歓迎できないと述べた。ラジューブは、アッバース大統領がペンス副大統領と会談することもないとした。ペンス副大統領は、イスラエル、パレスチナ、エジプトを歴訪する予定である。

 米国のサンダース大統領報道官は、7日の記者会見で、中東和平交渉の全当事者の最終目標は和平合意の締結であり、米国はそのために取り組んでいると述べた。またサッターフィールド国務次官補代行(中東担当)は、エルサレム内でイスラエルの主権が及ぶ範囲などはイスラエルとパレスチナの交渉で決まると強調し、米国の政策に変更はないとの認識を示し、大統領は(首都承認が)和平プロセスの手助けになると信じていると説明している。『ワシントン・ポスト』紙(6日)は、エルサレム首都宣言に賛成したのは、クシュナー上級顧問、ヘイリー国連大使、ペンス副大統領で、反対したのは、ティラーソン国務長官、マティス国防長官だったと報道した。『CNN』(6日)は、国務長官、国防長官に加えてCIAのマイク・ポンペオ長官も反対し、副大統領、国連大使、フリードマン駐イスラエル大使が賛成し、クシュナー上級顧問と国際交渉担当特別代表ジェイソン・グリーンブラットは、エルサレムを首都と認定することは支持したが、大使館移転は先送りするよう主張したと報道している。

評価

 国際社会の大勢は、トランプ大統領のエルサレム首都宣言に反対あるいは批判的である。同宣言支持を表明しているのは、今のところ、イスラエルとチェコの2カ国である。西岸での抗議行動は、7日時点では小規模である。米国の報道によれば、今回の決定にあたり、政権内部で意見の対立があった。中東の現状を知っている国務長官、国防長官、CIA長官が反対している。中東和平案を立案中のホワイトハウスのクシュナー上級顧問は、大統領が選挙公約を守ることを支持したと報道されている。クシュナー上級顧問を含めトランプ政権内部では、エルサレム首都宣言で、一時的にパレスチナ、アラブ諸国との関係が悪化しても、その後に関係改善は可能だと見ている。12月下旬に予定されているペンス副大統領のイスラエル、パレスチナ、エジプト訪問が、アラブ側の反応を計る最初のケースになると米国側は考えているようだ。

 

(中島主席研究員)

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