中東かわら版

№136 米国:トランプ大統領はエルサレムをイスラエルの首都と認定

 12月6日午後(日本時間7日未明)トランプ大統領は、ホワイトハウスで演説を行い、エルサレムをイスラエルの首都と認め、米国大使館をテルアビブから移転する準備に着手するよう国務省に指示したと発表した。トランプ大統領は、過去の大統領が選挙公約で大使館移転を約束しながらこれを実行してこなかったが、自分は公約を実行すると述べた。また過去の政策では中東和平交渉で成果を上げておらず、新しいアプローチが必要だとした。トランプ大統領は、今回の決定は、中東和平に関する米国の立場の変更を意味するものではなく、エルサレムに関する最終的地位交渉に影響を与えるものでもなく、東エルサレムの聖地の現状が変わるわけではないと主張した。

 イスラエルのネタニヤフ首相は、トランプ大統領の決定を歴史的な決定だと称賛した。しかし、パレスチナを含むアラブ諸国、トルコ、国連、EU諸国などは、トランプ大統領の決定に対して非難、懸念表明、反対を表明した。西岸とガザでは、小規模の抗議行動が起きているが、今のところ大きな衝突はない。

評価

 トランプ大統領の演説は、2016年の大統領選挙で自分を支持した国内の有権者に向けたものと思われる。トランプ大統領は、今回の決定はエルサレムの現状を追認するだけであり、今後のエルサレムの地位に関する交渉に影響はなく、米国は中東和平交渉を進めると主張している。しかし、これは今回の決定が、エルサレムをめぐる政治・外交的状況に与える影響を無視した国内向けの議論であり、国連、EU諸国、アラブ諸国と問題認識の次元で大きな隔たりが生まれている。欧州諸国は、即座にトランプ大統領の決定を非難し、反対を表明した。国連も今回の米国の決定について議論する予定である。国連やEUは、トランプ政権の中東和平問題の仲介者としての能力が疑問視されるようになった状況の中で、同問題について、中立的な立場に立ち、現実的な議論を行う国や国際機関が存在していることをアラブ諸国側に示す必要があると考えているようだ。米国に対する信頼感を大きく損なったパレスチナやアラブ諸国からの反応が出るまでには、少し時間がかかるかもしれない。米国のメディアでは、今回の決定で米国が得たものは何もないとの議論が出ている。トランプ大統領の「歴史的な決定」に対する評価は、米国内の一部とイスラエルを除けば、厳しいものになる可能性が高い。また米国の決定に追従する小国はあるかもしれないが、主要な国が立場を変える可能性は低い。

(中島主席研究員)

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