中東かわら版

№130 OPEC:2018年末までの減産措置延長でOPEC非加盟国と合意

 11月30日、ウィーンでOPEC加盟国とOPEC非加盟国との閣僚級会合が開かれ、2017年1月から継続している協調減産につき、2018年3月末とされていた期限を9カ月延長し、2018年12月末とすることで合意した。現在、OPEC加盟国は日量約120万バレル(以下、単位は全て日量)、ロシアなどの非加盟国は約60万バレルの減産措置を行っている。また、これまで減産措置を免除されていたナイジェリアとリビアが、新たに減産措置に協力することで合意した。

 『Bloomberg』の試算によると、協調減産については、サウジアラビアやベネズエラ、メキシコが目標を大きく上回る減産を達成した一方、イラク、UAEは目標を下回った。なお、全体で減産目標が達成できたのは、2017年1-10月の間で8-10月のみ。達成率がもっとも高かったのは9月の106%、もっとも低かったのは2月の76%となっている。

 OPECは、2017年の石油需要を9690万バレル、2018年を9850万バレルと堅調に伸びることを予想している。2015年は9400万バレル、2016年は9540万バレルの需要が生じており、毎年150万バレルずつ需要は伸びている。協調減産に参加していない非OPEC加盟国で最大の産油国である米国については、2017年は1420万バレルの生産(前年比60万バレル増)と予想しており、2018年には1510万バレル(前年比90万バレル増)と伸びることを予想している。2018年も協調減産の水準が維持されれば、需給バランスは約50万バレル供給不足になることになり、2017年4月以降進んでいる原油の在庫の解消はさらに進むことが期待されている。

 2016年に平均39.45ドル/バレルだった原油価格(OPECバスケット)は、2017年10月には55.50ドルまで上昇している。2017年平均でも50ドルを超える見込みであり、原油価格は前年比で約10ドル値上がりしている計算になる。

 

評価

 協調減産については、市場のシェア獲得のため各国が最大限増産を行った際の数字を基準としたため、積極的な減産というよりは増産の凍結という意味合いが強かった。これによる原油価格の上昇については、各国が減産目標の達成を真剣に目指すか疑問視されたこともあって、悲観視する見方が強かった。他方、OPEC内での減産を主導するサウジアラビアは、短期的な価格変動を狙うのではなく、石油の需要が伸びるまでの数年間を耐え忍ぶことを目標に、価格の下限を押し上げることを目指した。減産措置については一部で十分な履行が見られなかったものの、全体的には協調は維持されたと評価することができるだろう。

 他方、協調減産の継続により原油価格が60ドルを超えて上昇していくと予測するのは、楽観的な見方であろう。原油価格が高騰すれば、徐々に再開しつつあるシェール開発の復活に弾みがつくことになる。また、OPEC内でもサウジアラビアがイランやカタルとの対立を深めており、政治的な事由によりこの協調が崩れる可能性も否定できない。

(研究員 村上 拓哉)

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