中東かわら版

№115 中東:ジェンダー・ギャップ指数から見る中東の男女格差

 11月2日、世界経済フォーラムは、世界各国の男女格差の度合いを示した「ジェンダー・ギャップ指数」の2017年版報告書を発表した。同報告書は男女格差の状況について、経済参画(労働力率、同種業務での給与、所得、管理職率、専門職・技術職率)、教育(識字率、初等教育、中等教育、高等教育)、健康(出生比、寿命)、政治参画(国会議員、閣僚、過去50年間の国家元首の在任年数)の4項目の指標からポイントを算出している。

 同報告書によると、中東地域の男女格差は地域別で最下位となっている。域内でランキングがもっとも上位にある国はイスラエル(44位)であり、その後にチュニジア(117位)、UAE(120位)が続いている。また、144カ国中、イエメンが最下位の144位になっており、その上もシリア(142位)、イラン(140位)と続いている。項目別に見ると、教育分野では世界平均と中東平均にほとんど差はなく、健康分野では中東の平均が世界平均を若干上回っている。他方、経済参画と政治参画の分野では平均から0.1ポイント以上離れている国が多く、中東諸国の順位を大幅に下げることにつながっている。

 

 表:中東諸国の男女格差

※イラク、リビア、オマーンはデータなし

※順位の青字は中東諸国内における上位3カ国、赤字は下位3カ国

※ポイントの青字は世界平均より0.1ポイント以上高いもの、赤字は0.1ポイント以上低いもの

出所:The Global Gender Gap Report 2017より筆者作成

 

評価

 「ジェンダー・ギャップ指数」は、世界各国の男女格差の状況について、あくまで一側面を切り取った指標に過ぎないものであるが、国際的な比較や男女平等に向けた進展具合について手軽に参照できるものとして、広く利用されている。上の表を見ると、中東地域ではイスラエルが上位にある他は、いずれの国も総合ポイントで世界平均を下回っており、男女格差が大きい国家が多いと言えよう。他方、日本の総合ランキングも114位となっており、チュニジア(117位)やUAE(120位)とはポイントでもほとんど差がないことには留意すべきだろう。

 こうした指標を見ると、「中東地域では女性の人権が抑圧されている」というステレオタイプな見方をいくつかの点で相対化することができる。例えば、かつてアフガニスタンでターリバーン政権が女子教育を制限したことから、イスラーム世界においては女性の教育が奨励されていないという誤解が広まったが、世界平均と比べて見れば少なくとも中東地域には当てはまらない言説であることが分かる。また、保守的な社会と見られがちな湾岸諸国においても、バハレーン、カタル、クウェイトは女性の経済参画状況で世界平均との差が小さく、リベラルな社会と見られているチュニジアやレバノンよりも上位にある。

 また、女性の国家元首が誕生する可能性がない中東の君主制国家の中でも、民主化の度合いが高いクウェイトやバハレーンでは女性の政治参画がほとんど進んでいないのに対し、議員の半数が選挙ではなく首長による任命で選ばれるUAEにおいて、上からの改革により女性の政治参画が積極的に進められているのは、今後の社会の変化を占う上で示唆的である。

 

(村上研究員)

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