中東かわら版

№114 パレスチナ:ガザの国境管理をPAが掌握

 2017年11月1日、ガザのハマースは国境管理をパレスチナ自治政府(PA)側に移譲した。ハマースは、ファタハとの合意に従い、エジプトとの国境にあるラファ国境事務所、イスラエルとの境にあるエレツ、ケレム・シャローム境界事務所から部隊を撤収した。PAが掌握したイスラエルとの境界事務所は、すぐ活動を開始した。しかし、ラファ国境事務所については大統領警備隊の配置、エジプト側の事務所の再開などがあり、国境の再開は11月中旬になると報道されている。1日に行われたラファ国境事務所の管理引き渡し式典には、エジプト治安機関代表団、PAのハサイナ公共相や国境管理部門の幹部などが参加した。ハマース報道官は、和解協議の次のステップは、エジプトで開催されるパレスチナのすべての政治勢力による会合だとした。

 10月31日には、イスラエルとエジプトの国境管理事務所で徴収された税金を管理する口座がPA側に引き渡されたと報道されている。ハマースのガザ統治開始前には、ラファ国境事務所にEUの係員が国境管理業務支援のために派遣されていた。EUは、再度、支援団(Border Assistance Mission:EUBAM)を派遣する準備をしている。10月25日、EU代表団がガザに入ってラファ国境事務所を視察したほか、駐イスラエル・EU大使が、PA、イスラエル政府、イスラエル軍などと要員派遣のための調整をしている。報道では、11月中旬にエジプト・ガザ国境にあるラファ境国事務所が再開された後、国境は継続的に開放される。

 一方、10月30日、イスラエル軍は、ガザ南部のハーン・ユーニスで、ガザからイスラエル領内に向けて掘られたと見られる地下トンネルをミサイルで攻撃して爆破した。ハマースやイスラーム聖戦機構の戦闘員7人が死亡、14人が負傷したとされるが、両組織は、今のところ報復攻撃を控えている。

評価

 ガザの国境管理をPAが掌握したことで、ファタハとハマース間の政治合意の履行は、確実に一歩前進した。次の履行項目は、11月中旬までのエジプトとの国境にあるラファ国境事務所の再開と同国境事務所への大統領警備隊派遣である。またエジプトで11月中旬に予定されているパレスチナの政治勢力による会合では、ハマースの軍事部門の取り扱いや次の大統領・評議会選挙をどうするかについて協議される模様である。ファタハとハマースの和解協議が頓挫する可能性は常にあるが、両者の協議は過去にない段階まで進んでいることも事実である。

 

(中島主席研究員 中島 勇)

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