中東かわら版

№113 クウェイト:ジャービル内閣の総辞職

 10月30日、サバーフ首長はジャービル内閣の総辞職の申し出を承認した。国民議会では、ムハンマド・アブドゥッラー内閣担当国務相兼情報相代行による行政・財政上の不正行為が糾弾されており、先週に議員10人の連名による不信任の動議が出されていた。予定では、31日および11月1日に本件について議論されることになっていた。内閣が総辞職をしたのは、不信任決議が可決されることを避けるためと見られている。

 ジャービル内閣は2011年11月に成立した後、4度の総選挙(2012年2月、12月、2013年7月、2016年11月)を経験している。2016年11月の総選挙では反政府派が躍進し、ジャービル内閣との対立が先鋭化することが予想されていた(詳細は「クウェイト:第17回国民議会議員選挙の実施」『中東かわら版』No.129(2016年11月28日)「クウェイト:第6次ジャービル内閣の成立」『中東かわら版』No.140(2016年12月14日)

 

評価

 ジャービル内閣は総辞職したが、首相の指名は首長の専権事項であるため、サバーフ首長が再度ジャービル首相に組閣を命じる可能性は高い。その場合、不信任決議の対象とされたムハンマド・アブドゥッラー国務相を含め、数名の閣僚が入れ替わることが予想されよう。これまでにも、議会と政府との対立が過熱化しないよう、議会で喚問要求や不信任決議が出された段階で内閣が総辞職を発表し、問題を「リセット」する手法が何度も用いられてきた。ナーセル内閣は2006年2月から2011年11月の5年9カ月の間に5度も総辞職をしているが、5度目を除いていずれも新たな内閣を組むことを首長から指示された。

 政府と議会との亀裂が拡大することを避けるこの手法は、あくまで問題を先送りしているに過ぎず、新たな内閣と議会との間で同様の議論がいずれ行われることが予想される。政治が度々中断することによる弊害も大きいと指摘されているが、行政機関と立法機関の関係性も含めた国家機構全体の改革が行われない限り、クウェイト政治の停滞は今後も続くことになるだろう。

 

(研究員 村上 拓哉)

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