№94 チュニジア:内閣改造(シャーヒド第3次内閣)
9月6日、シャーヒド首相は内閣改造を行った。全28大臣のうち13名が新たに任命され、6党が閣僚入りした。閣僚リストの発表において、シャーヒド首相は、挙国一致内閣はテロとの戦い、腐敗との戦い、失業・地域間格差と開発のための戦いを続ける「戦争内閣」になると述べた。新内閣は、11日、議会での信任投票で信任された。
全閣僚リストは、以下のとおり(大臣付き書記は省略)。
1 |
内相 |
ルトフィー・イブラーヒーム(ブラーヒーム) |
前国家防衛隊司令官 |
2 |
法相 |
ガージー・ジャリービー |
|
3 |
外相 |
ハミース・ジャヒナーウィー |
NT |
4 |
国防相 |
アブドゥルカリーム・ズバイディー(ゼビディー) |
元国防相(11-13);元保健相、科学技術相(01-05) |
5 |
宗教問題相 |
アフマド・アズーム |
|
6 |
財務相
|
ムハンマド・リダー・シャルグーム |
NT;元財務相(10-11) |
7 |
産業・中小企業相 |
イマード・ハンマーミー |
NA;前職業訓練・雇用相 |
8 |
エネルギー・鉱業・再生エネルギー相 |
ハーリド・カドゥール |
エネルギー問題専門家 |
9 |
農業・水資源・漁業相 |
サミール・タイイブ |
MA |
10 |
貿易相 |
ウマル・バーヒー |
前農業相付き書記;元チュニジア農業漁業組合 |
11 |
投資・国際協力相 |
ジヤード・アザーリー(ラアザーリー) |
NA;前産業・貿易相 |
12 |
国有資産・土地問題相(新設) |
マブルーク・クールシード |
前国有資産・土地問題相付き書記 |
13 |
インフラ・住宅・空間計画相 |
ムハンマド・サーリフ・アルファーウィー |
|
14 |
地方問題・環境相 |
リヤード・ムアッヒル |
AF |
15 |
運輸相 |
ラドワーン・アイヤーラ |
NT;前移民・在外チュニジア人担当書記 |
16 |
観光・伝統工芸相 |
サルマー・ルーミー・ラキーク |
NA |
17 |
通信技術・デジタル経済相 |
アンワル・マアルーフ |
NA |
18 |
教育・訓練相 |
ハーティム・ベン・サーリム |
NT;元教育相(08-11) |
19 |
高等教育・科学研究相 |
サリーム(スリーム)・ハルブース |
|
20 |
文化相 |
ムハンマド・ザイン・アーブディーン |
|
21 |
保健相 |
サリーム(スリーム)・シャーキル |
NT;元財務相(15-16) |
22 |
社会問題相 |
ムハンマド・タラーブルシー |
|
23 |
職業訓練・雇用相 |
ファウジー・ベン・アブドゥルラフマーン |
AF;元IBM社 |
24 |
青年・スポーツ相 |
マジュドゥーリーン・シャルニー |
NT |
25 |
女性・家族・子ども相 |
ナジーハ・ウバイディー(ラアビーディー) |
MB |
26 |
首相付き大臣(大規模改革担当)(新設) |
タウフィーク・ラージュヒー |
NA;前シャーヒド内閣経済顧問 |
27 |
憲法機関・市民社会・人権担当相 |
マフディー・ベン・ガルビーヤ |
|
28 |
首相付き大臣(議会関係担当) |
イヤード・ダフマーニー |
RP |
評価
今回も、テロ撲滅、失業対策、開発という重要課題への取り組みのために挙国一致内閣が結成された。閣僚入りした政党は、前内閣と同様、6党である。主要ポストである内相、国防相、財務相で交代があったことが注目される。国防相には、ベン・アリー時代に複数の閣僚を経験し、革命後に国防相を務めたアブドゥルカリーム・ズバイディー(ゼビディー)が任命され、財務相には、同じくベン・アリー時代に財務相を経験したリダー・シャルグーム(チュニジアの呼びかけ党)が任命された。引き続き、旧政権時代の閣僚経験者を登用する傾向は続いている。
また、政党別のポスト配分を見ると、閣僚数が増加したのはチュニジアの呼びかけ党(4人→7人)とナフダ党(2人→4人)である。この変化は、チュニジアの呼びかけ党側から、前内閣で同党への閣僚ポスト配分が選挙結果に見合わない少なさであると不満が出ていたことと関係していると思われる。
内閣改造において最も重要な問題は、この挙国一致内閣がテロ、失業、腐敗、開発という国家的課題において成果をあげることができるかである。最近、政府は腐敗摘発や地方の若者の失業対策を積極的に推進しているが、いずれの課題も成果が実現するまで時間を要するため、政策をめぐる政党間の紛糾や市民社会からの抗議行動は続くだろう。また、連立与党の内部や与野党の対立が政策の遂行を妨げないようにすることも重要である。
(研究員 金谷 美紗)
◎本「かわら版」の許可なき複製、転送はご遠慮ください。引用の際は出典を明示して下さい。
◎各種情報、お問い合わせは中東調査会 HP をご覧下さい。URL:https://www.meij.or.jp/