中東かわら版

№88 エジプト:米国が対エジプト軍事・経済援助の一部を中止・留保

 8月22日、米国はエジプトへの軍事・経済援助の一部(計2億9070万ドル)について、供与の中止ないし留保を決定した。供与が中止されるのは、2017年度の対外軍事融資(FMF)総額13億ドルのうち6570万ドルと、2016年度の経済支援援助(ESF)総額1億5000万ドルのうち3000万ドルで、他の使途に回される。また、2016年度のFMFのうち1億9500万ドルは供与が留保される。

 援助中止・留保の情報は、ジャレッド・クシュナー米大統領上級顧問がエジプトを訪問する数時間前に、ロイター通信が米高官筋の情報として報道した。米高官筋によると、エジプト政府の人権および民主主義の遵守状況が不十分であることが、援助の中止・留保の理由にあるという。報道後、クシュナー上級顧問とシュクリー外相の会談がキャンセルされたものの、同上級顧問とシーシー大統領の会談は予定どおり行われ、その後、シュクリー外相との会談も改めて行われた。エジプト大統領府はそれぞれの会談について、イスラエル・パレスチナ和平交渉の促進が議題となったと発表した。

 23日、エジプト外務省は米国による軍事・経済援助の一部中止・留保に関して声明を出し、今次決定は、米国が数十年間にわたる二国間の戦略的関係を低く評価している表れであると批判し、遺憾の意を表明した。

 

評価

 今回の決定は、トランプ政権とシーシー政権が良好な関係を築いているとの見通しの中で、米政府の公式な声明ではなくロイター通信が報じたこと、そしてクシュナー上級顧問との会談直前に報じられたことから、驚きをもって受け止められた。さらに、9月には、2009年以来停止されていた米・エジプト合同軍事演習「Bright Star」が実施される予定である。クシュナー上級顧問とシーシー大統領、シュクリー外相との会談において、突然の援助中止・留保が話し合われたであろうことは想像に難くない。

 トランプ大統領は、4月のシーシー大統領との会談において、エジプトへの支援の継続を明言していた。今回の決定は、トランプ政権が対エジプト外交の方針を転換させたことになる。非公式なルートで突然明らかになったことも踏まえると、トランプ政権内部で政策決定過程に混乱が生じている状況がうかがえる。また、米政権内には依然として、エジプトの人権状況に懸念を抱く人々が存在することも明らかになった。エジプト政府は、これまでのようにトランプ政権との友好関係を絶対視することはできなくなるだろう。

 供与の留保が決定された軍事援助1億9500万ドルについては、今後、米国とエジプトとの交渉によっていずれ供与される可能性は高い。ティラーソン米国務長官は、米国の安全保障上の利益からエジプトへの援助継続を支持しており、援助対象国の人権状況を援助条件とすることからエジプトを免除するよう主張している。軍事援助の供与をめぐり、今後、トランプ政権がエジプトに対して人権や民主主義の遵守について努力を要求するのか注目される。

(金谷研究員)

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