中東かわら版

№84 イスラーム過激派:バルセロナでの襲撃事件

 8月17日の現地時間午後6時頃、スペイン・バルセロナの目抜き通りでバンが暴走して通行人を轢き殺し、これまでに13人が死亡、少なくとも100人以上が負傷した。死傷者には18カ国の外国人観光客が含まれている。スペイン治安当局はこれをテロ事件と認定した。その後、「イスラーム国」の自称通信社「アアマーク通信」は以下の短信を発出し、自派の戦闘員がバルセロナでの攻撃を実行したと伝えた。

画像:「アアマーク通信」の短信:「治安筋がアアマーク通信に伝える:バルセロナ攻撃の実行者達はイスラーム国の兵士である。彼らは有志連合諸国を攻撃せよとの呼びかけに応えるため作戦を実行した。」

 

 地元警察は、これまでにモロッコ生まれの男1人とメリーリャ(モロッコ側のスペインの飛び地)生まれのスペイン人1人を、事件に関係する容疑者として逮捕した。またバルセロナの事件後、同市南西の都市アルカナルで家屋の爆発事件があり、カンブリルスではバンによる通行人攻撃計画が警察によって摘発された。カンブリルスの犯人は爆弾を身に着けていたとの情報もある。スペイン警察は、上記3つの事件が関連しているとの想定で捜査を進めている。

 

評価

 これまで欧州諸国で「イスラーム国の兵士」が実行したとされる事件が何度か起きたが、スペインでは初めてである。スペインでは、しばしば「イスラーム国」と関係があるとされる「テロ細胞」が摘発されており、その多くはモロッコ人またはモロッコ系スペイン人が含まれていた。

 しかし、この事実と「アアマーク」の短信から今回の事件が「イスラーム国」の犯行であると断定するには、証拠材料が少なすぎる。これまで欧州諸国で起きた攻撃事件において、実行犯の「イスラーム国」への関与の程度は、同派の単なる支持者というレベルから実際に組織に属していたというレベルまで様々であった。今回の事件に関しても、今後、「イスラーム国」の公式媒体から実行犯の名前、画像、攻撃前の遺言映像など、当事者しか知りえない情報が出されない限り、実行犯と「イスラーム国」の関係が存在すると判断はできないだろう。

(イスラーム過激派モニター班)

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