№82 アルジェリア:タブーン首相の解任、ウーヤヒヤーが新首相に就任
8月15日、ブーテフリカ大統領は、5月に首相に就任したばかりのアブドゥルマジード・タブーンを解任し、新首相にアフマド・ウーヤヒヤーを任命した。政府筋によると、「タブーンは大統領の考えと同じではなかった」ことが解任の理由とされる。
新たに首相に任命されたアフマド・ウーヤヒヤーは、与党FLN(民族解放戦線)と共に連立与党を形成するRND(民主国民連合)の党首で、2015年から大統領府長官を務めていた。また首相経験は通算10年間にのぼる(1995-98年;2003-06年;2008-12年)。
7月から、現地メディアでタブーンと経済界の対立が報じられており、対立の背後には、タブーンが緊縮財政策として一部品目の輸入規制を決定したことや、経済界と政治の癒着を批判したことが関係しているようである。7月半ばからは、タブーン首相とアルジェリア経済界のトップであるアリー・ハッダード経営者フォーラム会長(経済界の利益団体)の対立が取り沙汰され、ブーテフリカ大統領がタブーン首相を批判したとの報道もリークされていた。
評価
タブーン首相は、油価下落による財政赤字対策として赤字事業の停止と中小企業支援、食品や産業部品の輸入規制を発表し、また経済界と政界の癒着を批判していた。ブーテフリカ大統領の権力基盤はアリー・ハッダードを中心とする経済界であり、タブーン首相の政策はこの経済界の利益を脅かすものであったと考えられる。新たに首相に任命されたウーヤヒヤーがハッダード会長と良好な関係にあることも、タブーン解任の背景を示唆している。また、7月半ばにタブーン首相とハッダード会長の対立が高じた際には、ハッダード所有の企業が参加する様々な事業の発注元である省庁が、事業の進捗の遅れについて一斉に謝罪を表明することがあった。これは、経済界と政界の分離を主張するタブーン首相に対して、政府がハッダードを支持したと理解できよう。
(研究員 金谷 美紗)
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