中東かわら版

№80 イスラエル:アザリア曹長によるパレスチナ人射殺事件(3)

 8月9日、イスラエル軍のアロール・アザリア曹長(予備役)は、1年半の刑期に服するため刑務所に収監された。刑務所の前では、アザリア曹長の支援者数十人が集会を開催したが、大きな混乱はなかった。アザリア曹長は、2015年3月、西岸南部のヘブロンで、イスラエル軍兵士を刺そうとして撃たれて負傷し、地面に横たわる状態のパレスチナ人男性を至近距離から射殺した。イスラエル軍は、軍規違反としてアザリアを拘束し、起訴した。2017年1月、軍事法廷は、アザリア曹長を有罪とし、2月に懲役1年半を宣告した。アザリア曹長の家族は上訴を行ったが、7月30日、裁判所は、同訴えを却下し、同時に、検察側が要求した刑期の延長も却下した。イスラエル軍幹部とリバーマン国防相は、アザリア被告の家族に、上訴をせず、参謀総長に刑期の軽減願いを出すよう説得し、アザリア及び家族は、判決を受け入れ、参謀総長に刑期の軽減を申請した。収監前、アザリアは、参謀総長に対する刑期軽減の申請の結果が出るまで、刑務所への収監を延期するよう要請したが、軍検察は悪しき前例になるとして同要請を拒否した。その結果、アザリア曹長は、8月9日、刑務所に収監された。

評価

 アザリアの刑期は1年半であるが、参謀総長は刑期軽減願いを真剣に検討するとしており、刑期が短縮される可能性はある。アザリア曹長のヘブロンでのパレスチナ人射殺事件では、軍の規律が優先されるか、あるいは「テロリスト」との戦いでは兵士が生き残ることが最優先されるという国民の感情が優先されるかが、国内の議論での争点となった。イスラエル軍幹部は、軍の規律維持が最重要であるとして、アザリアの無罪や恩赦を求める一部世論や右派・極右勢力と対立を強めた。

 アザリア曹長は有罪となったが、刑期は1年半である。他方、8月はじめに行われた世論調査(テルアビブ大学と民主主義研究所のPeace Index)では、イスラエル人回答者の70%が、イスラエル人を殺害したパレスチナ人テロリストへの死刑判決(現在の最高刑は終身刑)を支持している。イスラエル社会の内向き傾向は、ますます顕著になりつつある。

 

(中島主席研究員)

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