中東かわら版

№67 イラク:アバーディー首相がモスルで勝利宣言

 201779日、イラクのアバーディー首相はモスルを訪問し、同地の奪回作戦にあたっていた現場司令官らと会見したり、「イスラーム国」が最後まで占拠していた同市西部の街区を視察したりした。同首相は、モスルでの「イスラーム国」の完全な敗北を宣言し、イラク軍の「大いなる勝利」をたたえた。

イラクの「イスラーム国」対策概況図

 

1.  モスルとその周辺:アバーディー首相が「勝利宣言」したが、街区の一部では掃討作戦が続いており、それに伴い戦闘が発生している。「イスラーム国」はモスル南方のカイヤーラなどで作戦を行っている模様。

2.  タルアファル:依然として「イスラーム国」が占拠している郡の一つ。2004年以来のイスラーム過激派の地盤の一つ。

3.  カーイム:依然として「イスラーム国」が占拠している郡の一つ。ユーフラテス川沿岸の、シリアとの国境の町。シリア側にはアブー・カマール市がある。

4.  ハウィージャ:依然として「イスラーム国」が占拠している郡の一つ。キルクーク西方に位置する。

 

評価

 「イスラーム国」掃討についてのイラク筋の見通しは常に楽観的であり、分析の段階ではこの点を差し引いて考える必要がある。とはいえ、イラクやシリアに「イスラーム国」を支持する住民が多数いるとは考えにくく、「イスラーム国」自身の広報活動もモスル喪失後に砂漠地帯などに潜伏して活動を継続する方針を示唆している。また、イラク国内で依然として「イスラーム国」が占拠する諸地域は、相互に孤立している上、これらの地域がモスルのような政治的・社会的・経済的な重要性を帯びているわけではない。

 ただし、今後もイラク内外の政治的理由により残された諸地域の解放が遅れる可能性もある。例えば、諸地域を政府軍、シーア派民兵、クルド民兵の「いずれが取るか」という争いが生じて作戦が遅滞することもありうる。また、カーイムをはじめとするアンバール県では、国境のシリア側でアメリカ軍とシリア政府・親政府勢力との間で国境地帯の制圧を競ったり、相手方を妨害したりする事態が生じている。特にカーイムとシリア側のアブー・カマールの解放については、「イスラーム国」対策ともシリア紛争への対処とも無関係といえる「イランの封じ込め」という外交・軍事目標で事態に臨んでいるアメリカの動きが阻害要因となることも考えられる。

 

(髙岡上席研究員)

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