中東かわら版

№53 イエメン:コレラの流行が深刻化

 イエメンでは、20174月以来コレラの流行が深刻化している。同国では2016年末~2017年初頭にもコレラの流行が報告されたが、今般は流行が再発した形となっている。WHOUNICEFは、コレラ流行の被害状況や、援助とそのための課題などについて要旨以下の通り共同声明を発表した。

 

  • 2017年4月27日以来、イエメンの20県(全22県中)でコレラの疑いがある症例が11万6700件以上記録された。このうち死者は859人である。

  • イエメンの保健システムは、2年以上にわたる紛争でほぼ破壊された。完全な状態で操業している医療機関は半分以下であり、医療物資の供給は、連合軍が参戦した2015年3月と比べて3分の1に減少した。

  • 社会資本が破壊されたため、清潔な水の供給や下水サービスを受けられない者は、1450万人に達した。また、保健部門や清掃部門の職員たちは、8カ月以上給与を受け取っていない。

  • コレラの蔓延により、イエメンの子供の状況は一段と悪化した。コレラで死亡した子供たちは、そもそもひどい栄養失調だった。

  • これまでにイエメンでのコレラ対策のために寄せられた援助は6670万ドルに上り、これは半年分の必要額である。

 

評価

 コレラの蔓延を防止するためには、現場での治療や予防に加え、上下水道、ごみ収集、電力供給など、より大掛かりな社会資本や行政機関の整備が必要である。元々中央政府や行政機関の影響力が弱かったイエメンでは、紛争により社会資本の多くが破壊され、行政機関の機能も低下した。また、現在イエメンに存在する「政府」はサナアのフーシー派・サーリフ元大統領派であれ、アデンのハーディー前大統領派であれ、紛争当事者のひとつに過ぎず、これらのどちらかに援助を提供しても全国規模での対策にはつながらない。そうした中、国連機関が人道支援活動を行っているものの、これらの機関が紛争の現場で安全に活動することは困難である。以上に鑑みると、紛争の終結こそがコレラの蔓延を含むイエメンの様々な社会問題に対処する上で不可欠なのだが、紛争終結はおろか、部分的・一時的なものも含め、停戦につながる見通しは全く立っていない。

(髙岡上席研究員)

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