中東かわら版

№46 イスラーム過激派:メルボルンでのたてこもり事件

 201765日、オーストラリアのメルボルンで女性を人質に取ったたてこもり事件が発生、犯人1人が警察に射殺されたほか、男性1人が死亡した。この事件について、「イスラーム国」の自称通信社「アアマーク」が短信を発表した。

画像:「アアマーク」が発信した短信。全文訳は「治安筋はアアマーク通信に以下の通り述べた:オーストラリアのメルボルンでの襲撃の実行者は、イスラーム国の兵士である。彼は、連合国の国民を攻撃せよとの呼びかけに呼応して攻撃を実行した」。

 

評価

 「アアマーク」の短信は、これまでの形式を踏まえたものだが、「犯行声明」と呼ぶに値するほどの情報を含んでいない。むしろ、単調な短信を乱発し、犯行についての情報やその根底にある政治的主張・要求事項にまったく触れないことにより、「アアマーク」の短信の意義が低下しているように思われる。

 また、オーストラリアと「イスラーム国」との関係は決して浅くはなく、20146月に同派が発表した動画でオーストラリアからシリアに密航したムジャーヒドゥーンが西側諸国の同胞たちにジハードを扇動した事例がある。このような事例に鑑みれば、オーストラリアはかなり早い段階からイスラーム過激派への資源の供給地であると思われ、同国において「イスラーム国」を称する事件が発生したり、「イスラーム国」関係者と思われる活動が摘発されたりしても奇異なことではない。なお、2015年末の推計で、オーストラリアからは120人~250人が「イスラーム国」に送り出されていると考えられている。この実績は、周辺諸国の中ではインドネシア(700人以上)、バングラデシュ(200人以上)とともに大口の人員供給源とみなすべきものである。

(イスラーム過激派モニター班)

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