中東かわら版

№43 モロッコ:リーフ地方で社会経済的不満による抗議デモ

 モロッコ北部のリーフ地方で、国家機構の腐敗、失業などに反対する若者の抗議デモが広がり、政府はデモへの対応を迫られている。

 抗議運動の始まりは、2016年10月28日、ホセイマで魚売りの男性(ムフシン・フィクリー)が警官と口論になった末、ゴミ収集車の回転機に巻き込まれて死亡した事件である。これをきっかけに、国家機構の腐敗を批判する数千人規模のデモがホセイマを中心に行われた。同様のデモは断続的にホセイマで続いていたが、5月29日、抗議運動リーダーが治安当局に逮捕されると若者と治安部隊が衝突し、40人が逮捕された。抗議に参加している若者は、自分達は正当な社会経済的要求を訴えているに過ぎず、政府が対話を拒否していると主張し、リーフ地方では緊張した雰囲気が続いている。

 一方、政府は、リーフ地方住民の要求の正当性を認めつつも、抗議運動の中に外国勢力に支援された分離主義者がいると批判した。抗議運動側はこの指摘を否定し、自分達は平和的なデモを行っており、分離主義者ではないと主張している。政府側のこれまでの対応としては、タンジェ-テトアン-ホセイマ地方のウマーリー知事(PAM党首)が対話を呼びかけ、内閣報道官が開発計画の実施を約束、ラフティート内相ら複数の閣僚が国王の指令でホセイマを訪問するなど、リーフ地方の問題に関心がある姿勢を見せているが、政府と住民の対話実施に向けた具体的な動きは見えない。

 

評価

 リーフ地方はベルベル人口が多く、開発の遅れや失業率の高さが目立つ社会経済的に周辺化された地域である。19世紀からモロッコの中央政府と対立を続けてきた歴史もあり、現在もリーフ地方と政府は互いに不信感を持っている。このような歴史的、構造的な不満を背景に、昨年10月のムフシン・フィクリー死亡事件を口火にホセイマでの抗議デモは拡大した。また、政府が抗議運動を分離主義者と批判したことや抗議運動のリーダーを逮捕したことも、デモ参加者の怒りを増幅させた。

 政府は、リーフ地方の抗議が2011年の「アラブの春」のような大規模な抗議に発展することを懸念していると思われる。逮捕という方法でのみ対応すれば、抗議デモを鎮静化するどころか抗議の先鋭化という逆効果をもたらすだろう。まずは、政府と住民の直接対話が実施されるかどうかが注目される。また28日には、ラバト、カサブランカ、タンジェ、ナドールなどでもリーフ地方の抗議運動に連帯するデモが行われたが、こうした他都市での連帯行動が続けば、政府はリーフ問題に真剣に取り組まざるをえなくなるだろう。

(金谷研究員)

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