中東かわら版

№42 サウジアラビア:タバコ、ソフトドリンク等に対する課税の導入

 5月27日、サウジのザカート・租税庁(General Authority of Zakat and Tax: GAZT)は、6月10日からタバコ、ソフトドリンク、エナジードリンクに対する選択税(selective tax)を導入することを発表した。同措置は、5月23日にGCC事務局において、各加盟国が選択税の導入を決定したことに対応するもの。選択税の適用はGCCのなかでサウジアラビアが初となり、タバコ製品およびエナジードリンクに対して100%の税率、ソフトドリンクに対して50%の税率が適用される。政府関係者の試算によると、年間で80億リヤール(約21億ドル)から10億リヤール(約27億ドル)の税収が見込まれている。

 

評価

 これまで石油収入を主な財源としてきたサウジアラビアにおいて、課税による財源の多様化が進められている。2018年1月からは税率5%の付加価値税の導入が決定されており、今回の選択税はそれに先立つ措置となる。間接税の制度が未だサウジ国内には十分に浸透していないことから、GAZTはウェブサイトに小売店などに向けて納税の方法を説明するページを開設するなど、周知を図っている。他方、税金の申告漏れをした者にはその額の5%から25%の追徴課税が課されるほか、制度の違反者には最大で5万リヤールの罰金が科されることになる。このため、選択税導入直後には納税制度への理解不足による混乱が発生することも懸念されよう。

 タバコやソフトドリンクといった日常的に摂取される物品に対して高い税率が課せられることに対しては、一般の国民の反発が出てくることも考えられる。他方で、糖尿病などの生活習慣病が深刻化しているサウジアラビアでは、国民の健康問題に対応する必要にも迫られている。医療費補助など保健分野への支出はここ数年急速な増加を見せていたものの、原油価格の下落による緊縮財政のため、2016年以降保健分野に対する予算は大幅に削減されている。今回、課税対象にされている製品は健康を害する製品に対する課税であると説明されており、一部にはこれを歓迎する声もある。

(研究員 村上 拓哉)

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