中東かわら版

№41 エジプト:ミニヤ県コプト教徒襲撃事件について「イスラーム国」が犯行声明を発表

 5月26日午前(現地時間)、エジプト中部のミニヤ県で、県内の修道院に向かうコプト教徒(キリスト教徒)が乗ったバスが武装集団に攻撃され、29人が死亡、23人が負傷した。内務省発表によると、3台の四輪駆動車に乗った武装集団がバスを無差別に銃撃した。

 その後、同日夜から翌27日朝にかけて、エジプト軍はシーシー大統領の命令にもとづき、リビア東部のデルナにあるテロリストの軍事訓練拠点を空爆した。シーシー大統領は空爆に関して演説を行い、リビアを拠点とするテロリストが今回の事件の計画と実行に関与したと述べ、トランプ米大統領にテロとの戦いにおける協力を求めた。またエジプト政府は国連安保理に対してリビアに対する空爆は自衛行為であると説明した。米国をはじめとする欧米諸国は概ねエジプトの行動を支持している模様である。

 事件については、27日、「イスラーム国エジプト」名義の犯行声明が出回った。声明には、カリフの兵士の治安部隊が、ミニヤ市西部のサミュエル教会に向かっていた敵のキリスト教徒数十人に対して待ち伏せ攻撃を行い、十字軍の民31人以上を殺害、24人を負傷させ、彼らの車を放火したと書かれてある。

画像:「イスラーム国エジプト」名義の犯行声明

 

評価

 今次事件は、エジプトで活動する「イスラーム国」の最近の特徴を表している。自派の強さや残忍さを世間に示すための破壊行為の標的が、より世間の注目を集めやすいコプト教徒に移りつつある。2016年12月にはカイロの教会が、2017年4月にはタンタとアレキサンドリアの教会が爆破され、シナイ半島でも「イスラーム国シナイ州」によるコプト教徒の惨殺が行われた。こうした事件によってコプト教徒は政府の治安政策に対する不満を強め、コプト教徒内部の連帯を強める結果をもたらし、エジプト社会で「宗派対立」が深刻化するという見方も強まるかもしれないが、それは「イスラーム国」の扇動に乗ることを意味するだろう。

 エジプト軍が事件の報復としてリビア東部のデルナを攻撃したことについては、軍がどのような情報にもとづき攻撃を決定したのかは不明である。エジプトの西方砂漠は、リビアからの武器・ヒト・物資の違法取引が行われている場所であることは事実である。修道院はミニヤ県の都市部から離れた西方砂漠にあり、バスが襲撃された場所は砂漠の中だった。西方砂漠の地理に熟知した勢力によって攻撃が計画・実施された可能性が高い。

(金谷研究員)

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