№39 アルジェリア:アブドゥルマジード・タブーン内閣の成立
5月25日、ブーテフリカ大統領は、アブドルマジード・タブーンを首班とする内閣を任命した。5月4日に実施された国民議会(下院)選挙を受けての組閣である。2016年2月の憲法改正により、大統領は議会多数派との協議にもとづき首相を任命する(91条)ことになったが、議会多数派は以前と同じく民族解放戦線(FLN)であるため、組閣過程に特段大きな変化はなかった。
新首相には、サラール前内閣で住宅・都市建設相を務めたアブドゥルマジード・タブーンが任命された。サラール前首相は、選挙で第三党となった平和社会運動(MSP、イスラーム主義)に連立を提案したが、MSPはこれを拒否していた。その後、サラールはブーテフリカ大統領に辞任を申し入れ、新首相にタブーンが任命された。以下は、タブーン内閣の閣僚リストである。
※網掛けは新任。
※所属政党略称:FLN(民族解放戦線)、RCD(民主国民連合)
首相 |
アブドゥルマジード・タブーン |
前住宅・都市建設相(2012-17;2001-2;1999) |
副国防相・軍参謀総長 |
アフマド・ガーイド・サーリフ |
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外相 |
アブドゥルカーディル・ミサーヒル |
前マグリブ・AU・アラブ連盟相 |
内務・地方行政相 |
ヌールッディーン・バダウィー |
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法相 |
タイイブ・ルーフ |
FLN |
財務相 |
アブドゥルラフマーン・ラーウィヤ |
前財務省事務局長 |
エネルギー相 |
ムスタファー・ガイトゥーニー |
前Sonelgaz社CEO |
ムジャーヒドゥーン相 |
タイイブ・ザイトゥーニー |
RCD |
宗教問題・ワクフ相 |
ムハンマド・イーサー |
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国民教育相 |
ヌーリーヤ・ベン・ガブリート |
女性 |
高等教育・科学研究相 |
ターハル・ハジャール |
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職業訓練相 |
ムハンマド・ムバーラキー |
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文化相 |
イッズッディーン・ミーフービー |
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郵便・有線無線通信・デジタル技術相 |
フダー・イーマーン・フィルウーン |
女性 |
青年・スポーツ相 |
ハーディー・ウルド・アリー |
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国民連帯・家族・女性問題相 |
ガニーヤ・ダリヤ |
前議会問題相;FLN;女性 |
産業・鉱業相 |
マフジューブ・ビッダ |
前下院財務・予算委員会委員長;FLN |
農業・地方開発・漁業相 |
アブドゥルカーディル・ブーアズギー |
前ブリダ県知事、元ティジ・ウズ県知事 |
住宅・都市建設相 |
ユースフ・シュルファ |
元アンナバ県、ラグワット県知事 |
貿易相 |
アフマド・サーシー |
前トレムセン県知事、元アドラル県知事 |
通信相 |
ジャマール・カウーン |
前全国出版通信機関長 |
公共事業・運輸相 |
アブドゥルガニー・ザアラーン |
前オラン県知事 |
水資源相 |
フサイン・ナシーブ |
元水資源相(2012-15) |
観光・伝統工業相 |
― |
― |
保健・住宅・病院改革相 |
ムフタール・ハズビラーウィー |
前国立総合保健機関長 |
労働・雇用・社会保障相 |
ムラード・ジマーリー |
前青年雇用支援国民機構長 |
議会関係相 |
ターハル・ハーワ |
元議会関係相(2015-16);FLN |
環境・再生エネルギー相 |
ファーティマ・ザフラー・ザルワーティー |
環境ジャーナリスト;女性 |
評価
メディアはサラールの首相続投を予想していたものの、MSPとの連立が失敗し、タブーンが首相に就任することとなった。住宅・都市建設大臣や県知事を歴任したタブーン新首相は住民生活の諸問題を扱う方法を熟知しており、それが首相任命に繋がったと考えられる。
交代のあった閣僚ポストの多くは経済運営や国民生活に関係するものであり、社会経済問題への取組みが政府の最優先課題である点が見てとれる。原油価格の下落のためアルジェリアは緊縮財政を進めており、補助金削減や増税による国民の政府に対する不満は高まっている。
その他では、外相に前マグリブ・AU・アラブ連盟相のアブドゥルカーディル・ミサーヒルが就任した。これは、アルジェリア外交の重要課題がリビア危機の仲介外交になりつつある現状を反映し、外相職とマグリブ・AU・アラブ連盟相職を統合したと思われる。
また、観光・伝統工業相にマスウード・ベン・アグーン(アルジェリア人民運動)が任命されたが、3日後に更迭が発表され、現時点で空席となっている。学歴詐称が原因と報道されているが、大統領府からの公式の説明はなされていない。
(研究員 金谷 美紗)
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