中東かわら版

№37 イスラエル・パレスチナ:トランプ米大統領の来訪

 サウジ訪問を終えた米国のトランプ大統領は、22日から23日までイスラエルとパレスチナを訪問した。訪問初日の22日、トランプ大統領は、エルサレムでリブリン大統領と会談した後、東エルサレム旧市街(占領地)にあるキリスト教の聖地「聖墳墓教会」(キリストが処刑された丘の上に立てられたとされる教会)とユダヤ教の聖地「嘆きの壁」を訪問した。同聖地訪問は、トランプ大統領の私的な訪問とされ、イスラエルの関係者は同行していない。現職大統領の「嘆きの壁」訪問は初めて。その後、トランプ大統領は首相公邸でネタニヤフ首相と会談した。同日夜、トランプ大統領夫妻は、イスラエル首相官邸で開催されたネタニヤフ首相夫妻との夕食会に出席した。『ロイター』(23日)は、同会合に、クシュナー上席顧問夫妻も参加したと報道している。

 翌23日、トランプ大統領は、午前中に西岸のベツレヘムを訪問、パレスチナ自治政府のアッバース大統領と会談した。トランプ氏個人は、初めて占領下の西岸を訪問したことになる。エルサレムに戻ったトランプ大統領は、ホロコースト記念館を訪れ、その後、イスラエル国立博物館で演説を行なった。トランプ大統領は、同演説及びネタニヤフ首相、アッバース大統領との共同記者会見などで、イスラエルもパレスチナも中東和平交渉で合意する意思があること、そのために自分が尽力すること、そして難しいといわれる合意であるが自分は達成は可能であると信じていることを表明した。同演説がトランプ大統領のイスラエルでの最後の公式行事となった。イスラエルとパレスチナに滞在した時間は28時間だった。

評価

 トランプ大統領は、イスラエル・パレスチナ滞在中に、中東和平交渉を再開させ交渉で合意を達成することへの強い熱意・意欲を表明したが、それを実現するための具体的政策には一切言及しなかった。またトランプ大統領は、入植地問題、テルアビブにある米国大使館のエルサレム移転問題にも触れていない。

 トランプ大統領がイスラエルを離れた後、大統領専用機内で行なわれた政府当局者の説明では、米国はまず交渉当事者が遵守すべき諸原則を確定する方針のようだ。トランプ大統領の国際交渉担当特別代表ジェイソン・グリーンブラットが、来週にもイスラエル・パレスチナを訪問して協議を開始するとの報道もある。23日にトランプ大統領がイスラエル国立博物館で演説をした際、クシュナー上席顧問が、イスラエルの野党「シオニスト・ユニオン」のヘルツォグ党首に対して、米国は早期の交渉再開を行なうと述べたとも報道されている。トランプ政権は、具体的な政策を発表をしないまま、交渉再開に向けた非公式な協議を本格化させるかもしれない。

 

(中島主席研究員 中島 勇)

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