中東かわら版

№32 イラン:ロウハーニー大統領の再選が確定

 5月19日、第12期イラン大統領選が行われ、現職のハサン・ロウハーニー大統領が再選した。20日の内務省の発表によると、総投票数は4122万票、投票率は73.1%となり、そのうちロウハーニーは2355万票(57.1%)を獲得した。第2位はライーシー前検事総長の1579万票(38.3%)であり、第1位のロウハーニーと800万票近く差が開いた。ロウハーニーが過半数の票を獲得したため、決選投票は行われなかったが、これまでのイランの大統領選のなかではもっとも接戦となった(第2位の候補の得票率が今回の次に高かったのは、2005年の第9期大統領選で、ラフサンジャーニー元大統領がアフマディーネジャード・テヘラン市長(当時)の1728万票(61.7%)に対して1005万票(35.9%)を獲得したとき)。

 ハーメネイー最高指導者は、選挙結果確定後、高い投票率が実現したことに謝意を表明するメッセージを発出した。選挙および投開票は大きな混乱もなく終了しており、2009年の選挙後のときのような抗議活動が今後起きる可能性も低いだろう。

2017年大統領選挙

2013年大統領選挙

 

得票数

得票率

 

得票数

得票率

ロウハーニー

23,549,616

57.1

ロウハーニー

18,613,329

50.7

ライーシー

15,786,449

38.3

ガーリーバーフ

6,077,292

16.6

ミールサリーム

478,215

1.2

ジャリーリー

4,168,946

11.4

ハーシェミータバー

215,450

0.5

レザーイー

3,884,412

10.6

 

 

 

ヴェラーヤティー

2,268,753

6.2

 

 

 

ガラジー

446,015

1.2

 

 

 

 

 

 

無効票

1,190,401

2.9

無効票

1,245,409

3.4

総投票数

41,220,131

 

総投票数

36,704,156

 

有権者数

56,410,234

 

有権者数

50,483,192

 

投票率

73.1%

 

投票率

72.7%

 

 

評価

 選挙戦が開始される一年以上前から、ロウハーニーの再選を確実視する見方は強かった。イランでは1981年以降、二期目の当選を果たせなかった大統領はおらず、2016年3月の国会議員選挙・専門家会議議員選挙でもロウハーニー政権を支持する保守穏健派・改革派が勝利を収めていた。

 他方で、核合意成立後、マクロ経済の指標はいくつか改善が見られながらも、一般の国民はその成果を十分に実感しておらず、2013年の選挙でロウハーニーが公約としていた国民生活の改善についてはその実現度を疑問視する声も強かった(詳細は「イラン:監督者評議会が大統領候補者6人を選出」『中東かわら版』No.14(2017年4月21日)。だが、選挙キャンペーンでライーシーやガーリーバーフ・テヘラン市長が核合意の成果の乏しさについて追及したものの、ばらまき政策以上の具体的な対案を示すことができず、説得力に欠ける場面も多かった。保守強硬派は候補者の選定に難航したものの、投票日直前にガーリーバーフが撤退を表明したことで(詳細は「イラン:ガーリーバーフが大統領選から撤退」『中東かわら版』No.28(2017年5月16日)、最終的に保守強硬派内の票をライーシーに一本化することができた。ライーシーは選挙戦序盤は知名度不足に苦しんだものの、徐々に支持を伸ばして行き、最終的には4割近い票を集めることになったが、ロウハーニーの支持基盤を脅かすには至らなかった。もっとも、ライーシーはまだ56歳と若い。保守強硬派の有力政治家が高齢化するなかで、法学者としての評価も高いライーシーが若くして台頭したことは、今後のイラン政界に新たな変化をもたらすことになるだろう。

 再選を果たしたロウハーニーは、内政面でも外交面でもこれまで進めてきた路線を基本的に踏襲していくことになるだろう。前回の選挙に比べて得票率も上昇しており、自身の政策方針について国民からの承認を得たことになる。他方で、選挙協力を得た改革派に対しては、自宅軟禁状態にあるムーサヴィー元首相、キャッルービー元国会議長の釈放実現を含め、今後も提携を維持するために何らかの見返りを提供する必要があるだろう。ロウハーニー政権の2期目は8月から開始されることになるが、これにあわせて閣内の入れ替えも起きる見込みである。

(村上研究員)

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