中東かわら版

№29 イエメン:アデンで新政治勢力が発足

 2017511日、前アデン県知事のイードルース・ズバイディー氏が、自らを代表とする「南部移行評議会代表委員会」と称する「南イエメンの政治最高指導部」となる組織の結成を発表した。発表によると、軍事・政治・部族の著名人らが評議会を結成し、これが南イエメンを代表する。ズバイディー氏は、4月末にハーディー前大統領が自派の閣僚などの人事を行った際、アデン県知事から交替させられている。

 また、ズバーディー氏は、サウジなどGCC諸国の連合軍に対し、「南イエメンは、イランの伸張への対抗においてアラブ連合軍と、テロ対策において国際社会のパートナーであり続ける」と表明し、自らの運動への支援を呼びかけた。

 

評価

 南イエメンでは、1994年の内戦などを経て同地の天然資源や政治的権益が北イエメンに搾取されているとの不満が根強かった。こうした不満は、2011年以降の政変でも度々抗議行動のような形で現れており、今般の動きもハーディー前大統領派内での人事・政治的権益の配分を契機に南イエメンの政治指導者らの不満が顕在化したものといえよう。今般発足した勢力はあくまでGCC諸国の連合軍の支持を求めているようなので、フーシー派、サーリフ元大統領派、ハーディー前大統領派、アラビア半島のアル=カーイダ、「イスラーム国」など既存の紛争当事者と並び立つ政治・軍事的勢力となるかは不明である。その一方で、フーシー派や南イエメンの独立運動は、2011年の政変以後の「移行過程」で提示された政治的権益の配分で満足の行く結果を得ていない勢力であり、この点を省みなければイエメン紛争の構図の理解や紛争の収束のための努力において失敗が繰り返される恐れがある。今般の動きは、イエメン紛争を「正統政府対クーデター勢力」、「スンナ派対シーア派」、「サウジ対イラン」のように紛争当事者の主観やプロパガンダに沿って描写することの限界を示すものともいえよう。

(髙岡上席研究員)

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