中東かわら版

№28 イラン:ガーリーバーフが大統領選から撤退

 5月15日、大統領選の有力候補の1人であった保守強硬派のガーリーバーフ・テヘラン市長が選挙戦から撤退し、ライーシー前検事総長を支持することを表明した。撤退表明の声明において、ガーリーバーフは「革命戦線の統一のため、根本的かつ重大な決定が必要である」、「全国の私の支持者に対し、私の親愛なる兄弟であるエブラーヒーム・ライーシーの成功への全面的な支援を依頼する」と述べている。ガーリーバーフの撤退により、保守強硬派は候補者の一本化に成功したことになる。

 

評価

 保守強硬派内での候補者一本化は、大統領選開始前から交渉が続いていた。前回の2013年大統領選挙では、第1回投票までに候補者を一本化することができず、保守穏健派・改革派の支持を受けたロウハーニーに手痛い敗北を喫していた。今回の選挙でも同じ轍を踏まないよう調整が図られていたものの、今日までどちらが撤退するかで見解の相違が続いていた。今回、ガーリーバーフが撤退することになったのは、最近の世論調査でライーシーの支持が急激に上昇していた一方、ガーリーバーフの支持の伸び具合が低調だったことを反映したものだろう(詳細は「イラン:大統領選の推移」『中東かわら版』No.26(2017年5月15日)を参照)。

 投票日直前の候補者一本化は、保守強硬派陣営にとって追い風となるだろう。前回の2013年大統領選挙でも、投票日の3日前に改革派の有力候補が撤退し、ロウハーニー支持を表明したことで、ロウハーニーは地滑り的な勝利を収めた。今回、保守強硬派が採った戦略は、2013年に保守穏健派・改革派陣営が採用して成功したものと非常に似通ったものとなっている。

 他方で、ガーリーバーフ支持者がどれだけライーシーの支持に流れるかどうかは不透明な部分も大きい。米国の世論調査機関であるInternational Perspectives for Public Opinion (IPPO)がガーリーバーフの撤退表明前に行った世論調査において、各候補の支持者が2番目に支持する候補を聞いた際、ガーリーバーフ支持者のうち29.8%はライーシーを支持すると回答したものの、20.1%はロウハーニー支持、16%は誰も支持しないと回答している。ガーリーバーフがライーシー支持を表明した以上、実際にはライーシーに流れる票の割合はより多くなると見込まれるものの、一部はロウハーニーや他の候補にも流れることになるだろう。

(研究員 村上 拓哉)

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