中東かわら版

№26 イラン:大統領選の推移

 5月19日に実施される大統領選の選挙戦が終盤に差し掛かっている。12日には最後のテレビ討論会が行われたものの、現職のロウハーニー大統領が優位、それを保守強硬派のガーリーバーフ・テヘラン市長、ライーシー前検事総長が追う展開に変わりはない(前回のイラン大統領選に関する分析は「イラン:監督者評議会が大統領候補者6人を選出」『中東かわら版』No.14(2017年4月21日)を参照)

 The Iranian Students Polling Agency(ISPA)というイランの世論調査機関およびInternational Perspectives for Public Opinion (IPPO)という米国の世論調査機関がそれぞれ行った世論調査の結果は以下のとおり。

 

表:世論調査による大統領候補者の支持率(単位:日付の部分は%、増減の部分はポイント)

  ISPA IPPO
  4/23-24 5/7-8 増減 5/8 5/9 5/10 5/11 5/12 5/13 増減
ロウハーニー 43.5 41.6 -1.9 24 23 28 29 30 29.1 5.1
ガーリーバーフ 22.6 24.6 2 10 11 10 12 12 12 2
ライーシー 17.4 26.7 9.3 7 9 10 11 11 10.7 3.7
ジャハーンギーリー 3.6 3.2 -0.4 N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A
ミールサリーム 2.1 2.8 0.7 N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A
ハーシェミータバー 2.8 1.2 -1.6 N/A N/A N/A N/A N/A N/A N/A
まだ決めていない N/A N/A N/A 36 33 30 28 25 25.5 -10.5
無回答 8 N/A   8 10 8 10 11 13.1  


 

評価

 双方の世論調査では、質問の仕方、集計するタイミングが異なるため、単純な比較をすることはできない。しかし、双方に共通する重要な傾向をいくつか指摘することはできよう。第一に、ロウハーニーが二位を大きく突き放す形でリードしている。第二に、ライーシーは支持を伸ばし、ガーリーバーフと変わらない支持を集めている。第三に、支持の増減率は、ガーリーバーフ、ライーシーに有利に働いている。

 これらを総合すると、順当に行けば、ロウハーニーが再選する可能性は、依然として非常に高い。その一方で、保守強硬派内でガーリーバーフかライーシーかで候補者の一本化に成功する、あるいは第1回投票でロウハーニーが過半数を確保できず、決選投票にもつれこむ場合、ガーリーバーフないしライーシーに勝利するチャンスは残されていると言うこともできる。

 ロウハーニーは改革派からの最後の支持を集めることに成功している。13日、改革派のハーシェミータバー元副大統領は、自身が選挙戦から撤退することは否定したものの、かねてから支持を表明していたロウハーニー大統領に投票すると発表した。また、14日には改革派の重鎮であるハータミー元大統領もロウハーニー支持を表明した。もっとも、改革派の主流派は既にロウハーニー支持を表明していたこともあり、ハーシェミタバーやハータミーの動きが今後のロウハーニー支持の増減にどれだけのインパクトがあるかは不明である。

 保守強硬派内の候補者一本化については、未だに実現の見通しが立っていない。主流派はライーシーを推していたものの、知名度が高く人気もあるガーリーバーフが選挙に出馬したことで、保守強硬派の支持が二分されることにつながっている。当初は知名度の低いライーシーがガーリーバーフに合流する可能性が取り沙汰されていたものの、ここに来て両者の支持が均衡し始めていることから、ガーリーバーフがライーシーに合流する可能性も出てきている。

 イラン大統領選では、投票日の数日前に大きな動きが起きて結果が左右されることもあり、現段階では確定的な判断を下すことは困難だろう。目下の焦点は、第1回投票でロウハーニーが過半数を確保できるか否かにあり、残り数日で各候補者が浮動票をどれだけ取り込めるかが重要となる。

(研究員 村上 拓哉)

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