中東かわら版

№20 アフガニスタン:ターリバーンが春季攻勢開始を宣言

 2017428日、ターリバーンは今期の春季攻勢「マンスーリーヤ」攻勢を開始すると宣言した。これによると、期日はアフガン暦でソ連に対するジハードに成功した日に合わせて設定され、28日午前5時にアフガン全土で一斉に攻勢を開始する。また、宣言では、今般の攻勢では、毎年3月~4月にターリバーンが宣言してきたこれまでの攻勢とは異なり、民生部門の活性化や、アフガン政府の機関で働いている職員らを離脱させるための活動にも注力すると表明している。

 なお、軍事的な攻撃対象としては、外国占領軍やその拠点、占領者の諜報拠点、占領軍の傀儡が挙げられている。具体的な手法としては、集団的な殉教作戦(注:ターリバーンが度々行っている、生還を期待しない数名からなる班が政府の庁舎、軍事基地、外国人が利用するホテルなどを襲撃する作戦を指しているものと思われる)、(アフガンの治安部隊などに)潜入させた要員による襲撃、都市部での暗殺などが挙げられている。

 

評価

 今期の春季攻勢開始宣言で特筆すべきことは、軍事分野だけでなく社会・政治分野でも活動を活性化させ、占領者を一掃するとの決意を表明していることである。これは、アフガニスタンでの実際の政治・社会・軍事情勢はともかく、ターリバーンが軍事的に現在の政治体制やそれを後援する諸外国を打倒する可能性を見出し、その後の政治・社会の運営に関心を示していることを意味する。アフガン政府やこれを支援する諸国にとっては、軍事面だけでなくアフガンの人心を掌握して社会・政治面でもターリバーンに対抗する基盤を確立する必要がある。

 一方、攻撃対象としては、数年前は外交団、援助団体、外国の団体に協力する通訳なども挙げられていたが、近年はそうした対象を名指しする機会は減っている。ただし、今般の攻勢開始宣言では外国占領軍の打倒・排除を優先すると表明している以上、ターリバーンから外国軍に協力しているとみなされるような主体は、外交団であれ、援助団体であれ、報道機関であれ攻撃にさらされる可能性は高い。

(イスラーム過激派モニター班)

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