中東かわら版

№16 シリア:バアス党地域指導部の改選

 2017年422日、バアス党は中央委員会会合を開催し、中央委員会と地域指導部を改選した。地域指導部の部員には、以下の15人が任命された。

 

名前

特記事項

1

バッシャール・アサド

シリア地域指導部書記長。シリア・アラブ共和国大統領。

2

ヒラール・ヒラール

地域指導部副書記長。

3

ハディーヤ・アッバース

新任。人民議会議長。女性。

4

イマード・ハミース

首相。

5

ファハド・フライジ

新任。国防相。

6

フサイン・アルヌース

公共事業・住宅相。

7

ユースフ・アフマド

組織局長。元運輸相。元駐アラブ連盟代表。

8

ムハンマド・アンマール・サーアーティー

青年局長。人民議会議員(ダマスカス選挙区)。

9

ムハンマド・シャアバーン・アズーズ

労働者局長。元人民議会議員(アレッポ選挙区)。

10

ハンムーダ・サバーグ

農民局長。人民議会議員(ハサカ選挙区)。

11

アンマール・シバーイー

経済局長。新任。

12

フダー・ホムシー

諸組織・職能組合局長。新任。女性。

13

ヤーシル・シューフィー

教育・青少年組織局長。新任。

14

マフディー・ダハルッラー

準備・文化・広報局長。元情報相。元『バアス』紙編集長。

15

ムフシン・ビラール

高等教育局長。元情報相。

 

 

評価

 本来、バアス党の中央委員会、地域指導部は5年に一度開催されると規定されている地域指導部大会で選出されるべきところであるが、シリア紛争の勃発(2011年)や、憲法改正(2012年)などもあり、2005年を最後に正式に開催されていない。今般の改選では、フライジ国防相が地域指導部員に選任されたほか、中央委員会にアリー・マムルーク国家治安局長、アリー・アイユーブ参謀長、マーヒル・アサド准将(アサド大統領の弟)らが選任され、軍・情報機関の存在感を確認することができた。

 バアス党は、2012年の憲法改正の際に「国家と社会を指導する党」との規定が廃止され、国家や政府からの切り離しが図られているように思われていた。しかし、今般の改選では、人民議会の過半数を制する与党として、或いはシリアの公認政党のうち、唯一軍や治安機関の内部で組織を作ることができる党(注:他の公認政党は、連立与党の憲章やその他の配慮があり軍や治安機関の要員に対する運動・働きかけを自粛している)として依然としてバアス党の影響力が強いことが示されている。

 また、出身背景に着目した場合は、バアス党などからなる親政府民兵組織の責任者であるヒラール副書記長、バアス党スワイダ県支部長を務めるシューフィー教育・青年組織局長、アサド家に近しいと見られていたビラール元情報相の存在が注目される。

(主席研究員 髙岡 豊)

◎本「かわら版」の許可なき複製、転送はご遠慮ください。引用の際は出典を明示して下さい。
◎各種情報、お問い合わせは中東調査会 HP をご覧下さい。URL:https://www.meij.or.jp/

| |


PAGE
TOP