中東かわら版

№15 イスラーム過激派:パリでの銃撃事件

 2017420日、フランスのパリの繁華街シャンゼリゼ地区で銃撃事件が発生、警官1人が死亡、警官2名を含む3人が負傷した。警察の発表によると、襲撃犯1人は射殺された。この事件について、「イスラーム国」の自称通信社である「アアマーク」が短信を発信し、襲撃犯は「イスラーム国」の戦士の一人であると主張した。

 

画像1:事件についての短信。「アアマーク通信の治安筋:パリのシャンゼリゼ地区での襲撃の実行者は、アブー・ユースフ・ベルジーキーである。同人は「イスラーム国」の戦士の一人である」。

 

評価

 「アアマーク」の短信は、画像2の通りほぼ定型化されており、今般はその定型と大きく異なる。

 

画像2:定型化された短信の例。「治安筋はアアマーク通信に以下の通り述べた:昨日のロンドンのイギリス議会前での襲撃の実行者は「イスラーム国」の兵士である。同人は、連合国諸国の国民を攻撃せよとの呼びかけに応えて作戦を実行した」。

 

 画像12を比べると明らかなように、今般の短信は書き出しも異なれば、定型に含まれる「連合軍諸国の国民を攻撃せよとの呼びかけに応え・・・云々」との決まり文句もない。さらに顕著な違いは、実行者の名前を短信で公表したことであろうが、こうした差異が短信の内容の信憑性にどの程度影響があるかは不明である。「アアマーク」はこれまでもEU諸国で発生した様々な事件を「イスラーム国」の兵士が実行したと主張する短信を発信してきた。しかし、事件への「イスラーム国」の関与の程度はまちまちであり、単に便乗したに過ぎないと思われる場合から、実行者の遺言動画を後日配信したり、正式な声明を発表したりしてそれなりに関与が裏付けられる場合まである。今般の短信についても、報道機関やイスラーム過激派のファン層が「アアマーク」が発信したものと信じたように思われるため、短信そのものの信憑性を論じる意義は小さい。ただし、イスラーム過激派については「声明が本物であること」と「声明の内容が事実であること」とは全く無関係であり、「アアマーク」の短信についても同様の発想で取り扱う必要があろう。

(イスラーム過激派モニター班)

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