中東かわら版

№11 イラク:サドル派が財政難

 イラクのシーア派法学者で政治指導者でもあるムクタダー・サドル氏は、サドル派の一角をなす「サドル潮流」の職員の給与を、一部例外を除いて半減するよう指示した。「サドル潮流」の幹部は、この指示はイラク全体の経済危機を反映したものであり、サドル派も当然この危機の影響を受けていると説明した。なお、給与半減の対象となるのは、「サドル潮流」から給与を受け取っている職員であり、サドル派の文化部門や広報部門などの諸機構、サドル派構成員の公務員や国会議員は対象とならない模様である。この幹部は、サドル派はイラク人だけの運動であると述べ、イランからの財政支援の可能性を否定した。

 

評価

サドル派は、「平和部隊」(注:2004年~2008年ごろにアメリカ軍との戦闘や「宗派騒乱」で活発に活動した民兵組織「マフディー軍」を改組・改称したもの)を擁し「イスラーム国」との戦いに加わっている上、汚職追及・政治改革を要求する大規模なデモを度々組織するなど、政治・社会運動・軍事の各方面で活発に活動している。また、ムクタダーの父であるムハンマド・サーディク・サドル、おじであるムハンマド・バーキル・サドル(いずれも故人)の下で形成された宗教機関もサドル派に含まれる。今般の財政難や給与削減が、このように広範なサドル派のうちどの程度を対象としているのかは判然としないし、サドル派の財政難がどの程度の規模かも明らかではない。

一方、イラク社会全体を考えれば、「イスラーム国」との戦いでの戦費が嵩んだり、2015年以来の原油価格の低迷により国家の歳入が減少したりするなど、国、地方自治体、各種政治勢力のいずれも何がしかの形で財政的な苦境にあると思われる。既に、クルド地区政府でも財政危機が顕在化しており、このまま様々な公的機関や政治勢力が活動資金に苦しむ状況が続けば、モスル奪回の達成などにより「イスラーム国」対策にめどが立ったとしても、その後の統治機能の維持・回復や政治情勢に影響が出ることも予想される。

(髙岡上席研究員)

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