中東かわら版

№84 チュニジア:ユースフ・シャーヒド内閣の成立

 8月26日、人民代表議会はユースフ・シャーヒドを首班とする内閣(大臣26名、大臣付き書記14名)を承認し、同27日、シャーヒド内閣が成立した。

 6月にシブシー大統領が経済危機などの国家的課題を対処できる挙国一致内閣の形成を提案したため、当時のシード内閣は議会で不信任を突きつけられ、ユースフ・シャーヒドが大統領によって首相に任命された(2016年8月10日付『中東かわら版』No.78を参照)。

 シブシー大統領と諸政党及び市民団体との間で合意された挙国一致内閣の政策課題(カルタゴ合意)は、テロとの戦い、汚職撲滅、開発と雇用の促進、財政の見直し、環境及び衛生分野の改善である。シャーヒド新内閣は、カルタゴ合意に基づく政策運営が期待されている。以下は、大臣26名の一覧である。

太字: 新任
※所属政党:NT=チュニジアの呼びかけ党、NA=ナフダ党、AF=チュニジア展望党、MA=行進党、RP=共和国党、DA=民主連合党。特に表記のないものは無所属を意味する。

首相 ユースフ・シャーヒド NT;前地方問題相;農業専門家
法相 ガージー・ジャリービー 元国防相(2014-15)
国防相 ファルハート・フルシャーニー  
内相 ハーディー・マジュドゥーブ  
外相 ハミース・ジャヒナーウィー  
運輸相 アニース・ガディーラ NT
財務相 ラミヤー・ザリービー(ズリービー) 前中小企業融資銀行社長;元開発投資国際協力相付き書記;女性
開発投資国際協力相 ファーディル・アブドルカーフィー 元チュニス証券取引所社長
地方問題・環境相 リヤード・ムアッヒル AF創設者;人民代表議会議員
農業水資源漁業相 サミール・タイイブ MA;元制憲議会議員
産業貿易相 ジヤード・アザーリー(ラザーリー) NA;前職業訓練雇用相
公務員・行政相 アビード・バリーキー(ブリーキー) 元チュニジア労働組合総連合(UGTT)事務局長補佐
インフラ住宅空間開発相 ムハンマド・サーリフ・アルファーウィー  
観光手工業相 サルマー・ルーミー・ラキーク NT;女性
エネルギー鉱業相 ハーラ・シャイフ・ルーフー 前Green Climate Fund会長;元アフリカ開発銀行エネルギー・環境・気候変動部長;女性
通信技術デジタル経済相 アンワル・マアルーフ 元通信技術相付き顧問
女性家族子ども相 ナジーハ・アビーディー(ラビーディー) 元女性家族子ども省女性開発局長;女性
青年スポーツ相 マジドゥーリーン・シャルニー 前社会問題相付き書記(革命犠牲者・負傷者担当);女性
文化相 ムハンマド・ザイン・アーブディーン チュニス音楽高等学院長
保健相 サミーラ・マルイー AF;前女性家族子ども相;女性
社会問題相 ムハンマド・タラーブルシー 前ILOカイロ事務所上級専門家;元UGTT事務局長補佐
教育相 ナージー・ジャルール NT
高等教育科学研究相 サリーム(スリーム)・ハルブース カルタゴ大学ビジネス学院長
職業訓練雇用相 イマード・ハンマーミー NA;元制憲議会議員
宗教問題相 アブドルジャリール・ベン・サーリム 元ザイトゥーナ大学学長
首相付大臣(議会担当) イヤード・ダフマーニー RP;人民代表議会議員
憲法機関・市民社会・人権担当相 マフディー・ベン・ガルビーヤ DA;元制憲議会議員

 

評価

 シャーヒド内閣は挙国一致内閣という名で成立した。シード内閣より閣内に参加した政党数が多いこと(4政党から6政党)、年齢が比較的若い人物が入閣していること(1970年代生まれが6人、1981年生まれが1人)、女性閣僚の増加(3人から5人)、民主化に貢献したチュニジア労働組合総連合(UGTT)出身者が入閣したことに鑑みれば、たしかに多様な政治的・社会的立場が反映された内閣といえよう。

 しかし、多様性や包括性が反映された内閣であればチュニジアの抱える課題に対処できるわけではなく、多様な立場の者が交渉と妥協を通じて合意に辿り着けるか否かが重要となる。この点に関して、例えば、緊縮財政で最も必要とされる公務員の削減において閣内のUGTT出身者から反発が来ることが予想され、シャーヒド内閣は諸分野における利害調整に苦心せざるをえないと思われる。

(金谷研究員)

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