中東かわら版

№79 エジプト:IMFと3年間120億ドルの融資で合意

 8月11日、エジプト政府と国際通貨基金(IMF)は、3年間120億ドルの融資プログラムに合意した。エジプトのアムル・ガルヒー財務相によると、IMFとの交渉は今年4月第2週に始まり、7月末からカイロを訪問中のIMF代表団との最終交渉で合意に至った。

 エジプトの経済部門のほとんどは輸入に依存している。2011年以降、外国人観光客の激減と外資の逃避によって深刻な外貨不足に陥ったエジプトは、2011・2012年にIMFと融資合意に至ったものの最終的には合意を破棄し、2013年からはサウジなど湾岸産油国からの経済支援に頼った。シーシー政権が発足した後も外貨準備高は低いレベルにとどまり、輸入産業は打撃を被り、輸入品は値上がりし、エジプト・ポンドの公式レートと闇レートの差が開き続けている。エジプトとしては、IMFによる規律ある融資プログラムの支援を受けることで、外貨準備高を引き上げ、エジプト経済の国際的信用を取り戻し、成長を実現することを期待している。

  • エジプト政府に今後期待される構造調整政策は次のようなものとなる。
  • Ÿ外国為替市場の機能を改善:ポンド切り下げの可能性や変動相場制への移行の検討
  • Ÿ財政赤字の削減:付加価値税の導入、補助金削減
  • 政府債務残高の削減:現在のGDP比98%から88%にまで削減。インフラ、保健、教育、社会保障といった分野に公的資金を優先的に使う
  • Ÿ構造調整に脆弱な層を守るセーフティー・ネットを強化する
  • 雇用促進:特に女性と若者
  • 外貨準備高の増加
  • インフレ率を1桁にまで下げる

 今後は、IMF理事会で本合意内容が承認された後に、今年分の融資が実行される見通しである。また、その他国際金融機関(世界銀行、アフリカ開発銀行)からの支援や二国間支援も進む可能性がある。

 

評価

 上記の改革内容には、すでに実施されているものもある。補助金削減の政策として2014年に燃料や電気料金を値上げし(2014年7月10日『中東かわら版』No.85)、今年8月8日には再び電気料金を値上げした。また今年3月にはポンドの対ドル・レートを10%以上切り下げた。政府は歳入増加の取組みとして付加価値税の導入を決定し、現在、議会で法案が審議されている。

 しかしIMFは外国為替市場の改善、補助金削減、財政の均衡化においてさらなる改革を求めており、これらはエジプトに社会的不安(抗議)、政治的不安(政権基盤の不安定化)をもたらしうる。現状での変動相場制への移行はポンドの急落をもたらしうるため、当面、行われないと考えられる。では、さらなるポンドの切り下げをどの程度、いつ行うのか。電気料金の値上げは電気消費量の少ない層(低所得層)で最大の引き上げが行われているが、これは社会不安につながる恐れもあるだろう。最も政治的に難しい改革である食料補助金(パン、油、砂糖、塩など)に改革のメスは入るのかどうか。そして、こうした改革によって最も影響を受ける低所得層に対して、政府はどのようなセーフティ・ネットを用意するのか。付加価値税法案について、経済界はさらなる業績悪化につながると批判し、観光業界は課税免除さえ要求している。ムバーラク時代のように政治的安定を優先して漸進的で非抜本的な改革を行うのか、シーシー体制下の反対勢力の弱さを利用して抜本的な改革を進めるのか注目される。

(金谷研究員)

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