中東かわら版

№62 リビア:リビア国営石油会社の東西事業所が統合で合意

 7月2日、リビア国営石油会社(NOC)のトリポリ事業所(西部)とベイダ事業所(東部)はアンカラで会合を開き、東西に分裂していたNOC社を統合することで合意した。2014年夏に政府が東西に分裂した後、NOCや中央銀行という国家機関も東西に分裂し、国家財政の管理が混乱していた。特に石油収入が国家財政の多くを占めるリビアにおいて国営石油会社が東西に分裂することは、財政が不透明になるだけでなく、軍事対立を続ける東西政府それぞれが石油収入を財源に利用しかねず、東西分裂が固定化する恐れがある。NOC統合の合意を受けて、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、イギリス、アメリカは合意を歓迎する共同声明を発表した。

 合意の要旨は以下の通り。なお本合意は、報道によれば、下記合意内容に記されたベンガジへの本部移転後に発効となるようである。

  • 統合されたNOCは、国民合意政府(GNA)執行評議会、及び唯一正統な立法府である代表議会(東部トブルク)の統括下に入る。
  • ムスタファー・サナアッラー現NOCトリポリ事業所総裁はNOC総裁に就任する。
  • ナージー・フサイン・マグリビー現NOCベイダ事業所総裁はNOC理事会理事に就任する。
  • NOC本部をベンガジに置く。
  • 2016/17年度予算は東西で統合された予算とする。
  • インフラの復興を最優先課題とする。

 

評価

 NOCの統合は国家財政の混乱に歯止めを掛ける試みという意味で評価できる。しかし、少なくとも2つの点で不安な要素がある。

 第一に、合意の発効がベンガジへの本部移転後という点である。ベンガジでは東部政府(代表議会勢力)と複数のイスラーム過激派との戦闘が続いているため、すぐに本部が移転されるわけではなさそうである。  

 第二に、NOCが統合された組織として機能するためには、GNAと代表議会が統一国家の行政府・立法府として協調する必要がある。しかし、代表議会はGNAを「国際社会が作り上げた政府」「イスラーム主義者のトリポリやミスラータの民兵組織に支持された政府」と見なし、GNAを承認する審議を延期し続けている。代表議会がGNAを承認しない最大の理由は、代表議会の軍事勢力の総司令官であるハリーファ・ハフタルが、GNA傘下にいずれ結成される正規軍において周辺的ポジションに置かれる可能性があることである。さらに、東部の油田地域ではGNA支持の石油施設警備隊と代表議会勢力が交戦しているし、GNA勢力(ミスラータ民兵)支配下の南西部シャラーラ油田から北に伸びるパイプラインは代表議会勢力(ジンターン民兵)支配下にあるナフーサ山地を通過しなければならない。現場での戦闘に収束の目処が立たない現状では、NOCの組織統合が実現しても石油生産を通常レベルに戻すことは難しいといえる。

(金谷研究員)

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