中東かわら版

№194 イエメン:フーシー派の財源

 2017326日付『ハヤート』(サウジ資本の汎アラブ紙)は、国連の専門家が作成した報告書を基に、フーシー派やサーリフ元大統領派が「隠された経済」に依拠し、以下のような財源から資金を調達していると報じた。

 

  • 商業の売り上げや民間部門の賃金に、20%の税率で課税している。課税対象にはカートの取引も含まれるが、カートの取引額はイエメンのGDPの10%を占めている。

  • 密輸業者や闇市場での密輸品取引から関税を取り立てている。

  • 支配地域の地方政府の税収を、中央政府に送金させている。

  • 全ての石油製品に対し、1リットルにつき4リヤールを課税している。これによる収入は年間2億3700万ドルに達する。

  • 中央銀行が軍や治安機関の要員に支払う給与や、国防省の経常的経費として支払う資金を還流している。イエメンでは、紛争勃発後機能しなくなっている部隊があるが、これらへの経費は2014年の予算に基づいて支出され続けており、そうした資金をフーシー派の指揮官らが受け取っている。

  • サーリフ元大統領派が、フーシー派の監視を受けつつも国家財政に対する支配を回復した。

  • イエメン中央銀行の外貨準備は、2016年末で枯渇した。

 

評価

 フーシー派やサーリフ元大統領派の幹部の中には、2011年以来のイエメンの政権移行に関する国連安保理決議の履行に伴い、制裁対象になっている者がいる。また、20153月にイエメン紛争が本格化して以降、同国の経済は破綻状態となっており、イエメン人の多くが困窮している。そうした中、フーシー派、サーリフ元大統領派だけでなく、ハーディー前大統領派についても国外からの支援なしには紛争を続けることが難しいように思われるかもしれない。しかし、今般の報告書は、紛争当事者は外部からの資源の調達が困難な状態でも支配下の住民を搾取することによりある程度の資金を調達できることを示している。しかも、搾取の対象は困窮が極めて深刻なイエメン人民であり、イエメン紛争の人民への被害は甚大であるといえる。イエメン紛争の関係国が、今般資金調達の手法が明らかになったことを、紛争当事者に対する制裁や経済封鎖のあり方や、紛争調停の働きかけを見直す契機とできるかが焦点となろう。

(髙岡上席研究員)

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