中東かわら版

№193 イスラーム過激派:ロンドンでの襲撃事件

 2017322日、ロンドンにあるイギリスの国会議事堂前で自動車と刃物を用いた襲撃事件が発生、警官1名と民間人3名が死亡し、多数が負傷した。この事件について、23日に「イスラーム国」の自称通信社「アアマーク」が短信を発表した。

画像:「アアマーク」が発信した短信。全文は、「速報 2017/3/23 治安筋はアアマーク通信に対し以下の通り述べた。:昨日のロンドンにあるイギリス議会前での襲撃の実行者は、「イスラーム国」の兵士である。彼は、連合軍諸国の国民を攻撃せよとの諸般の呼びかけに呼応してこの作戦を実施した。」との内容。

 

評価

 この事件については、既にイギリスの警察が実行犯の氏名と身元(ハーリド・マスウード 52歳)と発表しているが、「アアマーク」の短信はこのような事実には一切触れていない。元々、この種の短信は日付と事件の発生場所を変えただけの同一形式で作成されており、短信は「実行犯のみが知りうる事実の暴露」や「攻撃の意図や要求事項」を明らかにする「犯行声明」の機能を果たしていない。そして、「アアマーク」がこのような短信を発信することにより、「イスラーム国」は自派との関係がほとんどない事件でも、世界中でムスリムが引き起こす破壊活動や犯罪行為を自派の「戦果」として取り込むことが可能となる。従って、この短信が発信されただけで事件を「イスラーム国」の「戦果」と認定し、その意図や原因に関する憶測や推論をめぐらせることは、「イスラーム国」の広報活動に協力することにもなりかねない。

 今後、今般の事件と「イスラーム国」との間の実際の関係の程度を証明するには、「イスラーム国」自身が正式な犯行声明を発表して事件についての情報を開示するか、実行犯であるマスウードが「イスラーム国」への忠誠を表明する動画などを発表する必要がある。

(イスラーム過激派モニター班)

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