中東かわら版

№180 イスラエル:アザリア曹長によるパレスチナ人射殺事件の裁判 (2)

 2月21日、イスラエル軍の軍事法廷は、1月に有罪と判断したアロール・アザリア曹長(20歳)に対して懲役1年半を宣告した。アザリアの弁護士は、同判決を不服として上告すると報道されている。アザリア曹長は、2015年3月に西岸の都市ヘブロンで、負傷して路上に横たわるパレスチナ人を至近距離から射殺した容疑で4月に起訴され、5月から裁判が開始され、2017年1月に有罪の判決が出ていた。(中東かわら版2017.01.06「No.154 アザリア曹長によるパレスチナ人射殺事件の裁判」参照https://www.meij.or.jp/kawara/2016_154.html

 アザリア曹長に射殺されたパレスチナ人の家族は、刑期1年半の判断に驚きを表明することはなく、裁判は見世物だったと非難した。他方、イスラエル極右の政党「ユダヤの家」党首のベネット教育相は、アザリアの即時恩赦を要求した。参謀総長、国防相に恩赦の手続を開始するよう求めた閣僚もいる。リバーマン国防相は、関係者は判決が出されたことを尊重し、その判断に従うよう要請した。

 イスラエルのNGOによれば、2000年以降、占領地内でイスラエル軍兵士がパレスチナ人を殺害して調査されたケースが260件あるが、起訴されたのはアザリア曹長のケースを含めて2件だけになる。

評価

 司法の判断が下された後も、アザリア曹長をめぐる議論でイスラエルの世論は二分されたままである。右派・極右は、占領地で勤務する兵士が、暴力を振るったパレスチナ人を射殺したことで起訴されたこと自体を非難している。軍律を重視するイスラエル軍は、若い兵士の規律の緩みを懸念している。一方、イスラエルの占領下にあるパレスチナ人たちは、過去50年の経験から、今回のような裁判で、彼らが納得するような判決が出ることを最初から期待していない。パレスチナ人の若者たちは、イスラエル軍に投石しただけでも、アザリア曹長よりはるかに重い刑を宣告されている。こうしたイスラエル内外の状況はイスラエルの司法制度が解決できる問題ではなく、イスラエルの政治家が、占領地をどうするかについて政治決断することで解決するしか方法はないだろう。イスラエル政府が政治判断を避け、「現状維持」を図るなら、国論の分裂は継続され、占領地の治安状況はさらに悪化するだろう。

 

(中島主席研究員)

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