中東かわら版

№175 パレスチナ:ガザのハマースが新指導者を選出

 2月14日、ハマースは、ガザ地区の新指導者を選出した。イスマイル・ハニーヤ前「首相」に代わる指導者はヤフヤー・サンワールで、ハマースの軍事部門カッサーム旅団の創設者の一人とされる。サンワールは、1962年にガザのハーン・ユニス生まれ(現在55歳)で、イスラエル軍に逮捕された後、1989年にイスラエルに協力したパレスチナ人殺害などの容疑で4つの終身刑を宣告されている。2011年に、ガザのハマースが人質にしたイスラエル軍兵士との交換で釈放された。釈放後は、ガザで活動しており、ガザで最も有力な政治家で、ハマースの「国防相」のような存在であると報道されていた。サンワールは、2013年にハマースの政治局員となり、米国務省は2015年に同人をテロリストに指定している。サンワールは、これまでメディアと会見しておらず、ハマース内での影響力は強いが、組織外での知名度は低い。

 ハマースは、4つの地区(ガザ、西岸、イスラエルの刑務所、在外)の代表を秘密選挙で選出する。報道では、ガザ地区の秘密選挙は、1月ないし2月はじめから開始された模様である。

評価

 ヤフヤー・サンワールは、ハマース内でも強硬派と見なされている。そのため彼がガザのハマース指導者となった結果、イスラエル軍との緊張が高まるかもしれない。他方、彼は軍事部門の司令官ではなく、政治家であり、国防相のような立場にあるとの説もある。ガザでは、ハマースの軍事部門の発言力が増大しているといわれているが、サンワールなら、軍事部門を統制する力があるかもしれない。サンワールの政治的な立場がどうであれ、ガザのハマース指導者が最優先して行うべきことは、対外的には、ガザに対する封鎖の解除(対エジプト関係あるいは対イスラエル関係の改善)であり、内政的には西岸を統治するファタハとの国民和解を進めることである。もしサンワールが、イスラエル軍との軍事衝突を進めるのならば、政治的な成果を得る可能性はなく、ガザ住民が意味のない甚大な被害を被るだけに終るだろう。

 サンワールは、イスラエルの刑務所に20年以上服役している。このことは、彼がヘブライ語を理解し、イスラエルの政治・社会や国民について熟知していることを強く示唆している。また服役中に知り合いになったファタハの活動家も大勢いるだろう。昨年12月に西岸で開催されたファタハ総会の際に行なわれた中央委員会メンバー選挙では、1位にイスラエルの刑務所で服役中のマルワン・バルグーティ、2位にパレスチナ・サッカー協会会長で元治安長官のジブリール・ラジューブが選出された。この2人もイスラエルの刑務所に長期間服役した結果、ヘブライ語を習得しており、ラジューブはヘブライ語の本を翻訳したり、イスラエル側のメディアに出演して、ヘブライ語でコメントしたりしている。イスラエルの西岸・ガザ占領は、今年で半世紀になる。50年という期間は、パレスチナ側の指導層の中に、長期の服役を通して、政治的な立場や所属組織は違うが密接な関係のある囚人仲間ができたり、服役を通してイスラエルをよく知る政治家たちが登場するようになったりしても不思議ではない時間が経過したことを意味する。

 

(中島主席研究員)

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