中東かわら版

№172 リビア:東西統一に向けた諸外国の動き

 国民合意政府(GNA)と東部政府に分裂しているリビアを統一するため、周辺の諸外国が外交活動を活発化させている。このなかで見えてくるのは、国連、EU、欧米諸国、ロシア、アラブ諸国という東西いずれかの政府を支持する諸外国・組織が、東部で絶大な影響力をもつハリーファ・ハフタル・リビア国民軍総司令官を将来の統一政府に参加させることで意見を一致させつつあるという事実である。

 これまで国連、EU、欧米諸国はGNAをリビアの正統な政府、東部の代表議会を正統な立法府とみなす一方で、GNAの承認を拒む代表議会と東部政府を批判してきた。しかし昨年末から、東部のハフタルを統一政府に参加させることを検討している旨の発言が増えている。他方、ロシア、エジプト、UAEは、GNAの正統性を認めつつも実質的には東部政府を支持しているが(ロシアに関しては『中東かわら版』2016年12月2日付、No.131を参照)、最近は統一プロセスへの関与も見られるようになった。

 12月14日、エジプト政府仲介のもとカイロでリビアの諸勢力が会し、統一プロセスを規定した「リビア政治合意」(2015年12月署名)の一部修正について合意した。統一の最大の障壁である、GNA執行評議会が国軍最高司令官権限を担うと規定した第8条第2項を修正するとした点が新しかった。1月からは、エジプト、チュニジア、アルジェリアの3カ国間で頻繁に外相や有力政治家が往来し、リビア問題について協議が行われている。1月24日にチュニジアのハンマーマートで行われたリビア政治対話には、東部勢力が欠席したものの、やはり第8条第2項の修正で合意がなされた。2月に入ると、チュニジアが、サッラージュGNA首相とハフタルの直接対話を実現するための仲介を行っていることも判明した。

 EU側にも変化が見られる。2月6日の欧州理事会の後、モゲリーニEU外交・安全保障上級代表は、リビア統一に必要であれば同国の正統な統治主体に関する認識を修正する用意があると述べ、東部勢力に融和的な態度を見せた。同6日、イタリアの駐リビア大使は東部・代表議会のアギーラ・サーリフ議長と会談し、東部に領事館を開設する用意があると伝え、アルファノ外相はリビア問題についてロシアと協議を始めたと明かした。

 

評価

 GNAは国連リビア支援ミッション(UNSMIL)の仲介で成立したものの、民兵組織を統制できず、統治能力をほぼ持たない。これとは対照的に、東部ではハフタル総司令官率いるリビア国民軍が着実に政治的・軍事的支配を固めている。この現実を受け入れずにリビアの統一は実現できない、という考えが諸外国で共有されている。

 統一に向けた外交活動を行っている上記の国々は、ロシアを除き、いずれもリビアの分裂が国内の治安・政治状況に直接的な影響を与える国々である。イタリアはリビアからの不法移民・難民が地中海を渡って流れ着く場所であり、その他EU諸国も中東方面からの移民・難民の増加によって極右勢力の台頭に直面している。エジプト、チュニジア、アルジェリアは、リビアの治安崩壊によって違法なヒト(移民難民、イスラーム過激派)やモノ(武器、麻薬)の流入が増加し、各国の政治が不安定化するリスクに直面している。

 他方、ロシアが昨年末からリビア国民軍及びハフタルと関係を深めている理由として考えられることは、カッザーフィー時代にロシアがリビアへの最大の武器供給国であった過去を踏まえ、再びリビアとの軍事的・政治的関係を強化し、中東におけるロシアの影響圏を確保することである。リビア統一に向けた諸外国の動きにおいて、ロシアは鍵となる。ハフタルを統一政府に組み込むことが諸外国の合意となりつつある今、ハフタルに最も影響力を有するのはロシアである。これを理解して、イタリアは上述のとおりロシアとの協議を開始したとみられる。ハフタルに統一政府内でどのような役割を与えるかについて、リビア国内でも諸外国においても明確な案は出されていないが、いずれにせよ、今後の統一プロセスにおいてロシアの影響力が高まることが予想される。

(金谷研究員)

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