中東かわら版

№170 イラク:クルド地区の立法・行政の停滞

 201724日付『ハヤート』紙(サウジ資本の汎アラブ紙)は、クルド地区で立法・行政が停滞しているため、複数の行政機関が法的根拠を喪失したと報じた。それによると、クルディスタン民主党(KDP)と変革運動との対立が高じた結果、201610月に治安部隊が変革運動に所属する国会議長が議会のあるアルビルに入ることを阻止し、以後国会が開かれていない。そのため、「人権委員会」、「綱紀粛正委員会」、「金融監視委員会」の責任者の任期が更新されなかった。

 

評価

 クルド地区では、2015年秋に地区の大統領も任期が満了したまま任期更新も後任の選出も行われておらず、政治の停滞が続いている。また、国会も停止状態で、今般の事例のように行政機関の人事やその活動の法的根拠に悪影響が出ている。こうした状況に対し、地元の政治家らからは政府機関の汚職が拡大したなどの批判も出ているが、立法・行政の停滞の原因である諸政治勢力間の対立が解消する見通しは立っていないようである。

 現在のような状況は、クルド地区においてフセイン政権打倒後に導入された政治制度が機能していないことを示している。クルド地区はイラクの中では政治・治安が安定していると考えられているが、政治制度の麻痺はこうした状況に悪影響を及ぼす恐れがある。また、現在の停滞が、その原因となっているクルドの諸政治勢力や政治家たちの非民主的・権威主義的体質を反映したものととられれば、クルド地区に対する内外の評価をも落とすことになろう。

(髙岡上席研究員)

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